味方のふりをして近づいてみよう

相手の女性から相談を受けて秘密を知った場合ですが、ここで正義の味方になる必要はまったくありません。でも、狡猾に「○○しないとこの情報バラしますよ」では脅しになり、かえってこっちがピンチに陥ってしまいます。

「Aさんから、部長とどう接していいか困っていると相談されました。きっと本人の誤解でしょうけれど、総務部に相談しにいったりしたらややこしいことになりますし、ちょっと追いつめられているみたいですから、騒ぎが大きくならないうちに言い含めておいたほうがいいと思うのですが」と味方のふりをして近づいてみましょう。

「総務に相談にいくと言っていましたが、さらし者になるからと言ってとりあえず止めておきました」

こうすれば首根っこを掴んだのも同然です。味方と思わせ恩を売る。

ジョーカーを1枚手に入れたのですから、自分が進めているプロジェクトが他の部署から反対や妨害に遭ったとき、権力を持っている人の後押しが欲しいなど、いざというときのために上手に使いましょう。

でも、中途半端だと目障りな奴だと飛ばされるかもしれません。『半沢直樹』のように情報をうまく利用して復讐するドラマはスカッとしますが、現実の世界ではそんなにうまくいくとは思えません。こちらに相当な度胸と演技力、知的な判断力がないと墓穴を掘るのではないでしょうか。

逆に「おまえ、絶対に黙っていろよ」と強く言われ、噂になったらなったで「きさま、よくも喋ったな、覚えてろ」と睨まれる最悪の展開も考えられます。

触らぬ神に祟りなし。見なかったことにするのも賢明な判断です。握ってしまったセクハラ情報を使ってああしてやろう、こうしてやろうと、上司が失脚する妄想を膨らませるだけでも楽しいのではないでしょうか。上司の命運を左右する弱みを握っていると思っていれば、今まで嫌だった陰険な叱り方、意地悪な態度も「ふん、このスケベおやじが」とほくそ笑んでいられます。

具体的な行動ではなく、精神的優位に立つことでストレスをなくすというのも、小心者の立派な情報活用術なのです。

コラムニスト 石原壮一郎
『大人力検定』ほか「大人もの」シリーズで正しい大人の立ち居振る舞い、言動の考察を続ける。最近は「伊勢うどん友の会」を主宰し、その研究と普及に情熱を燃やしている。
(構成=遠藤 成)
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