「おいしいと感じる安定」は大事な感覚
たとえば、牛丼やカレーなど、同じメニューを週に何度も食べている人でも健康に過ごしている例は少なくありません。
これは、主食(炭水化物)・主菜(タンパク質・脂質)・副菜(ビタミン・ミネラル)という基本構成が揃っていれば、自然と必要な栄養素を補えているからです。
祖父母の食事を振り返ってみても、実はご飯(炭水化物)、干物やお刺身(タンパク質・脂質)、煮物や味噌汁、漬物、果物(ビタミン・ミネラル)と、シンプルながらも基本的な栄養素はそれなりにカバーできています。
つまり、「毎日同じ=栄養が偏る」とは限らないのです。
実際、長寿地域の人々の食卓も実はとてもシンプルで、似たような食材を毎日食べていることが多いのです(詳しくは、本書『食べたいものを、食べていい 「毎日牛丼」生活も肯定する科学』の第3章で紹介します)。
人間は「食に慣れる」生き物でもあります。
毎日同じ味を繰り返すことで、体はそのリズムを覚え、安心感が生まれます。食事の満足感や幸福感は、味のバリエーションよりも「おいしいと感じる安定」から生まれる部分が大きいのです(*1)。
好きなメニューが定番になるのは、「自然な本能」と考えることができます。
食事の最適化で心も体も健やかに
もちろん、まったく同じ味では飽きることもあります。その場合は、調味料を少し変えたり、調理法をアレンジしたりすれば十分です。
たとえば、同じ野菜でも「炒める」「蒸す」「和える」といった調理法を変えるだけで風味ががらりと変わります。これは「多様化」ではなく、「小さな変化」で楽しみを生み出す工夫です。
要するに、健康のカギは「バリエーションの数」ではなく、「基本が整っているかどうか」です。
本書の第1章でお話しした、炭水化物・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルという五大栄養素が満たされていれば、献立が少なくても大きな問題はありません。むしろ、同じメニューでも栄養の土台が安定しているほうが、体調もメンタルも整いやすいといえます。
毎日同じ食事をとることは、手抜きではなく「最適化」です。
体に合うパターンを見つけて続けることは、立派な自己管理です。「今日も好きなものを食べられる」――それだけで、心も体も健やかになれるのです。

