フジテレビは「被害者」ではないのに…

昨年の「一連の事案」=「フジテレビ問題」を振り返れば、被害者の「当社元アナウンサーAさん」は退社しており、すでに社員ではなかった。もちろん、加害者の中居正広氏は、当然、同社のメンバーではない。当該の問題をきっかけに、当時の編成制作局編成部長をはじめ、合計6人が処分された。

今回は、どうなのか。

同社の「声明」では、「当社から男性俳優の言動について、厳重注意を行うとともに、再発防止を求めたことは事実」としているにとどまり、番組制作の責任者であるプロデューサーをはじめとした同社の社員やスタッフについては、まったく言及されていない。「調査中」とも「処分を検討」とも書かれていない。

あくまでも邪推に過ぎないものの、ことによると同社は、「男性俳優の言動」による「被害者」であると、みずからを考えているのではないか。表現は悪いけれども、「もらい事故」のように、巻き込まれただけとでもとらえているのではないか。

レトロなブラウン管テレビ
写真=iStock.com/Pituk Loonhong
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会社と社員を守りたいだけなのか

これもまた私の日本語力が劣っているせいかもしれないが、「声明」を読む限り、あくまでも自分たちは第三者なのだとでも言わんばかりの他人事感が漂っている。その他人事感は、ここまで述べてきたように「女性俳優」の「プライバシー」を、意識してなのか無意識なのか「侵害」しているかのような文章にも由来する。加えて、「男性俳優」と同社社員とのやりとりが、どのようなものであったのか、「声明」でまったく触れられていないところにも由来する。

「フジテレビ問題」に際して、当時の港浩一社長は、週刊文春の報道を「全くのでたらめ」と言い放ち、中居氏へのヒアリングに立ち会わず、ゴルフに出かけたばかりか、銀座に移動して「アルコールが入っていると思われる状態で、意見のやり取りを継続」していた(「調査報告書」77ページ)。

こうした当事者意識の欠如は今回もまた、続いているのではないか。「人権尊重」の錦の御旗の下に守りたいのは、社員の立場と、会社の面目ではないか。声明からは、自分たちの説明責任よりも、組織防衛を優先しているような印象を与えかねないのではないか。