“真の”社会的責任の果たし方

近年「企業の社会的責任」にも注目が集まっている。といっても、寄付活動や社会貢献活動だけが該当するわけではない。地道な企業活動の中で、企業倫理などを土台にスタッフや社員を大事にすることこそが、企業の社会的責任の“正しい果たし方”だと言えるだろう。そしてそういった地道な活動が、中長期的に見て企業の評判向上につながる。

今回のようなフリーランスへのしわ寄せが明らかになれば「この企業は人を大切にしていない」というイメージにつながる。特に芸術や教育、衣食住に直結する団体は、人間の生きる活動を豊かにし、サポートすることが企業の目的・業務内容であるはずだ。

それなのに「働いている人々の人生が豊かになっていない」ことが明らかになってしまうと、結果として人々に、割り切れない思いや腑に落ちないイメージを持たせることにつながる。これは企業のイメージ戦略の点から見ても決して良い結果を生まないだろう。

「買いたたき」指摘が懸念される業界・業種

現代は、副業・ダブルワークが徐々に一般的になりつつある。本件はフリーランスの音楽講師の事案であるが、今や個人や企業もこうした問題の当事者になり得る。よって働き方や契約に関する意識のアップグレードが重要である。

具体的には、労働者側は一人ひとりが働き方を考えるとともに、社会全体の仕組み、すなわち「価値やお金の循環」といった経済システム全体やルールに関心を持つ必要がある。企業側もまた、価値提供に対して健全な対価を支払う経済システムの担い手である認識が不可欠だ。必要であれば取引慣行を見直し、声を上げる意識が今後一層重要になっていく。

今回の「買いたたき」指摘は、音楽教室業界にとどまらないと考えられる。例えば、ITシステム開発、ウェブ・動画制作、教育・インストラクター業などに携わるフリーランスを多用する業界・業種も、本件と同様のリスクに注意が必要である。

コーディングしている人の手元
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ITシステム開発やウェブ・動画制作の分野では、システムやアプリケーションの納品後、あるいは動画編集作業の完了後に追加作業が発生すれば、原則として追加の費用負担をすべきだ。ところが、要件定義の範囲外での事後的なプログラム修正や、追加保守・メンテナンスを曖昧な条件で求めると、フリーランス側の負担は当初の想定を超えることになる。

納品時点で品質や依頼内容の条件を明確にし、十分にすり合わせを行うことが必要であり、そのうえで追加対応が必要なら、追加料金を支払って対応すべきであろう。

また、学習塾や各種スクールなどの教育・インストラクター分野でも、音楽講師と同様に、講義料金の値下げや報酬の発生しない待機時間、準備・片付けなどの負担が懸念される。提供価値に対する対価と業務範囲を明確にするとともに、契約上の根拠なく無償で拘束することは避け、やむを得ず追加的な対応を求める場合には必要な報酬を支払うべきだ。