すでに中国に笑われる国になっている
もちろん失敗例もあります。コロナ禍前に注目された高速道路に敷き詰めた太陽光パネルで走りながら充電できる技術です。
2025年に中国を訪ねたときに、あの技術がどうなったのか聞いてみると、日の目を見なかったそうです。それは技術開発に失敗したからではありません。5分の充電で400キロ走行できるEVが開発されたので、高速道路に太陽光パネルを敷き詰める意味がなくなったからです。画期的だと謳われた技術ですら、必要がなくなれば、躊躇なく墓場に送られてしまう。
ただ、太陽光発電は成功しています。現在、中国では全電量供給量の約26%が太陽光発電でまかなわれています。私は以前、中国最大規模の「首航高科敦煌100メガワット溶融塩タワー式光熱発電所(以下、首航敦煌)」を見学しに行きました。その規模のすごさとともに、同行した日本人の科学者の言葉が印象的でした。
彼は「この技術、日本がはじめてやろうとしたのは1980年代の初め頃だったのに……」とつぶやいたのです。日本は技術の優位性を活かせなかった――その現実を見せつけられた思いがしました。
残念ながら、ここまでの説明をしても「中国の技術力はまだ日本に追いついていない」というイメージを持つ人は少なくありません。いまの日本は、ひとつ目の失敗だけを見て、「そら見たことか」と見下しているような状況です。自分たちにとって都合のいい短絡的な情報のみを求めています。
このままでは、失敗を笑った側が、いつか笑われる側になってしまう。いえ、すでにそうなってしまっているかもしれません。
相次ぐ逆転の理由
――かつて日本の強みだった家電、EV、造船、再生可能エネルギーなどの産業で中国が世界をリードしています。この逆転現象は、なぜ起きたのでしょうか。
中国が民意の影響を最小限に止め、政府による揺るぎない政策の後押しができることも一因でしょう。
一方で、日本では選挙が行われます。選挙のたびに前政権の否定が行われるので、政策の継続が難しい。加えて有権者は、短期的な結果を求めるので、長期的な政策を実現させにくい。大企業も、トップは2、3年で代わります。彼らは、その間に結果を残さなければなりません。10年後に花が咲くような事業に取り組みにくい。長期的な絵を描くという点で不利な状況になっています。
その構造は、アメリカも同じです。もしもアメリカが民意の影響を受けずに、すべてをトップダウンで決定できる国だったら……。たぶん中国は、アメリカに太刀打ちできなかったでしょう。現実的にはありえない話ですが。

