「しゃべれば終わる」という未体験ゾーン
そこで登場するのが音声入力だ。「いまさら音声入力?」と思われるかもしれないが、近年の認識精度の向上は目を見張るものがある。
キーボードで必死に打ち込むより、しゃべって入力するほうが圧倒的に速い。一般的に、話すことでの入力はタイピングの約3?5倍のスピードが出るといわれている。
しかし、このメソッドの真価は単に入力速度の向上だけでなく、場所と姿勢から解放されることにある。音声入力をするのに、机に座る必要もパソコンを開く必要もない。スマートフォン片手に、散歩の最中でも、リビングのソファでくつろいでいるときでも、あるいはベッドの中でまどろんでいるときでさえ、文章をつくることができる。
書き言葉のように整然と話す必要もない。言い淀みがあっても、言いたいことの順序が逆になっても、文法が破綻していても、いっさい気にする必要はない。
これまでの文書作成では、書きながら「てにをは」を修正したり、構成を練り直したりしていたが、そうした推敲作業は思考のノイズになってしまう。
とにかく脳内にあるものを生の状態のまま吐き出せば、あとでAIがきれいに修正してくれる。 これは強力な安心材料である。体裁を気にせず、考えを表に出す姿勢に徹することができるのが音声入力の最大の強みだ。
従来の音声入力で作成したテキストは、「えー」「あのー」といったフィラー(無意味な言葉)や、脈絡のない思考の断片が入り混じった、いわば「汚いテキスト」だった。
それを読みやすい文章に直す手間を考えると、「キーボードで打ったほうが早い」という結論になるのもうなずける。
しかし、生成AIはこのテキストを瞬時に「わかりやすい文書」へと昇華してくれる。
雑多な独り言の音声を添付した。これを論理的なビジネス文書に整えて。
このように指示するだけで、AIは文脈を読み取り、不要な言葉を削ぎ落とし、順序を入れ替え、見事な構成の文章に一瞬で整えてくれる。
私たちはただ、思いついたことをしゃべるだけ。これまでにない執筆体験だ。
いい思考は「リラックス」から生まれる
デスクに向かわず、パソコンも開かず、散歩や休憩をしているようにしか見えないのに、猛烈なスピードで仕事が進んでいく。従来の価値観では、仕事とは「机にかじりつき、眉間にシワを寄せてパソコンに向かうこと」だったかもしれない。
しかしこれからの時代、そのスタイルは必ずしも正解ではなくなる。むしろ、リラックスした状態で脳を自由に遊ばせ、そこで生まれた良質なアイデアをAIという優秀な秘書が形にする。 このスタイルのほうが、生産性も創造性も高くなることは明白だ。
実は、今みなさんが読んでいる本稿の文章も、私が椅子に深く腰かけ、のんびりとスマホに向かって話した内容がベースになっている。
私が実際に口にした言葉はもっと散漫で、あっちに行ったりこっちに行ったりしていた。
「えー、ここはもうちょっと、しっかり説明したいんだよね」とか「あっ、さっきのたとえ話、ちょっとわかりにくいかな」といった独り言もそのまま録音されている。
しかし、AIによる要約と整形のプロセスを経ることで、みなさんの目には、最初から計算されて書かれたかのように整然とした文章として映っているはずだ。
私がやったことといえば、リラックスしてアイデアを口にしたことと、できあがった文章をざっと確認して気になった部分を修正しただけ。そこに、机に向かってキーボードを叩き続けるという苦労はいっさいない。
文章を書くことにまつわる心理的なハードル、物理的な労力を極限まで下げ、なおかつアウトプットの質を高める。
この 「音声入力×AI要約」の組み合わせを取り入れることで、みなさんも書くという重労働から解放され、もっと本質的な「考える」という行為に集中できるようになるはずだ。


