画面を前にフリーズする時間は消え去る

AIに「こういうことを伝えたいから、失礼のないメールの文面をつくって」と指示すれば、一瞬で文章が生成される。「この資料を要約して、報告書の構成案をつくって」と頼めば、瞬く間に整然とした構成案が提案され、「構成づくり」の苦しみから解放される。

すると私たちがやるべきは、AIがつくったものをチェックし、中身に自分の意思を込めることになる。

このことは、私が身をもって体験している。

2025年9月、私は『仕事が10倍ラクになるずるいAI活用術』(青春新書インテリジェンス)という本を上梓した。この執筆過程で私はAIと一緒に構成を考え、ドラフトを書かせ、壁打ち相手になってもらった。

ノートパソコンのキーボードに入力する男性
写真=iStock.com/cozygraphic
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その結果、かつてないスピードで原稿が完成しただけでなく、書くことへのストレスが劇的に軽減した。白紙の画面を前にフリーズする時間は消え去り、純粋に「何を伝えるべきか」という思考に集中できたのだ。

この体験は、私にとって大きな転機だった。

書くことは、もはや人間が一人で苦しみながら行うものではない。面倒な部分はすべてAIという相棒に任せ、人間はもっと本質的な判断や意思決定に注力できるのだ。

「書く」に支配された私たち

書くという行為が激減したとき、私たちの仕事は10倍速く、そして何より楽しくなる。

むやみに自分で書くことから解放されれば、私たちは本来の目的である「人に何かを伝えること」に集中でき、その結果として、仕事の質もスピードも劇的に向上するのだ。

ここでは、多くの職場で起きているであろうビフォー・アフターの様子を対比させ、その変化を具体的にシミュレーションしてみよう。

まずはAI導入前の現状だ。あなたも次のような状況に覚えがないだろうか。

1 .会議の議事録にまつわる憂鬱

会議が終了した瞬間、参加者の間に漂う微妙な空気。「さて、今日の議事録は誰がやる?」という無言の牽制し合いである。

多くの場合、その役回りは仕事を覚えるためという大義名分のもと、若手や新人がやることになる。しかし、内容を深く理解していない新人がつくった議事録は、要領を得ないトンチンカンなものになりがちだ。

結局、上司がそれに赤字を入れたり、イチからつくり直したりすることになり、チーム全体で大きな時間を浪費している。議事録は今後の行動計画を左右する重要な文書のはずだが、本音を言えば誰もが「単純につくるのが面倒くさい」と思っている。

2 .メール作成における過剰な配慮

上司への進捗報告や、取引先への依頼メール。たった一通のメールを送るのに、言葉を選びすぎて30分もかかってしまった経験はないだろうか。

「この言い回しで失礼はないか」「宛名の順序はこれで合っているか」「『お世話になっております』の次は何を書くべきか」。本題とは関係のない配慮という名のマナー地獄にはまり込み、推敲に次ぐ推敲を重ねる。気づけば、たった数行の連絡のために、貴重な午前中が潰れていることさえある。

3 .アイデアの墓場

ふとした瞬間に、素晴らしい企画のアイデアを思いつくことがある。「これを実現できれば、クライアントは喜ぶぞ」と胸が躍る瞬間だ。

しかし、いざそれを企画書にしようとパソコンを開いた途端、急激に熱が冷めていく。

「まずは表紙をつくって、目次を入れて、現状分析のグラフを貼って……」

体裁を整える作業の面倒さが、アイデアの輝きを上回ってしまうのだ。 「まあ、時間があるときにやろう」となり、二度とそのファイルが開かれることはない。

これは個人の損失であると同時に、会社にとっては巨大な機会損失だ。

結局、私たちが感じている仕事の辛さの正体は、この「伝わるような形に体裁を整える」という作業の面倒さに集約される。