「半沢直樹」を生んだヒットメーカー
本作で初めて大河ドラマに挑んだ八津氏は、当代屈指のヒットメーカーだ。40%超えの記録的な視聴率を獲得した「半沢直樹」を始め「下町ロケット」、「VIVANT」(共同脚本)などTBS日曜劇場枠で成功を収め、朝ドラ「おちょやん」はやや振るわなかったものの、2025年公開の映画『爆弾』(共同脚本)もヒットさせた。
そんな八津脚本作品らしく、「豊臣兄弟!」の序盤は、「半沢」モードで進んでいった。信長の家臣団に足軽として入った秀吉と兄に巻き込まれた秀長が、合戦の場で自分たちの父親を殺した男に対して敵討ちをもくろむ。これぞ「倍返し」の半沢風大河だ。当初は、そんな王道の展開と秀吉にまつわる史実がうまくミックスしているように見えた。
しかし、折り返し地点となる5~6月に入り、一気におふざけモードに。全50回近くある大河ドラマ、どんな名作でも中盤はダレるものだが、視聴率も初回以降は下がったまま。今後が心配ではある。
特に気になるのは、秀吉という歴史上稀にみるミラクルな下剋上を果たした人物の描き方だ。
第1話では、秀吉は上司に当たる人物を迷いなく斬り捨て、百姓から武士に成り上がった人間としてのすごみと冷酷さを見せたが、それから出世し一城の主となると、浅井長政(中島歩)や松永久秀など、謀反人すらも必死に救おうとするなど、“お花畑”のような善人ぶりが前に出てきた。
秀吉の残虐さをエクストリーム擁護
記憶喪失展開では、さらに秀吉の人格が一変。いつものお調子者ぶりや図々しさはどこへやら、おとなしくて善良でピュアな男になってしまった。「わしのようなものが」と常に謙虚で、弟にも「小一郎殿」と丁重に呼びかけ、戦場で血を流すことなど、とてもできそうにない。もし、戦乱の世でなければ、秀吉はこんなふうにお人好しのまま生涯を送れたのかもしれない。そう思わせる描き方だった。
しかし、史実では、秀吉は上月城の敵を斬首するなどし、女子どもに至るまで串刺しにしてさらした。三木城は兵糧攻めで「干し殺し」に、さらに備中高松城は水攻めにするなど、苛烈さを極めていくのだが、どうも「豊臣兄弟!」では、それをエクストリームに解釈して擁護するらしい。
第22回で上月城の女たちは秀吉が城に入った時点で自害しており、秀吉は死体を利用して自分たちが「敵には容赦しない」と見せかけただけと描いたように……。
