観光客にもビジネスマンにもスルーされる
廃墟化の2つ目の要因は、観光客が通り過ぎていることだ。
コトノハコ神戸には神戸布引ハーブ園/ロープウェイが隣接しており、その出入口は平日でも国内外の観光客がひっきりなしに通っている。神戸市発表の観光入込客数を見ると、神戸布引ハーブ園には年間59.3万人が訪れている。
このあたりは北野エリアと呼ばれ、異人館街もある神戸の観光スポットのひとつである。しかしコトノハコ神戸では、観光客らしき人はほぼ見かけない。
飲食店が9つあり、3階には日本の古い街並みを感じさせる内装のレストランエリアがある。日本らしい串かつやとんかつの店舗が並び、店先のメニュー表に英語表記をしている店舗もあることからインバウンドを狙っている様子もうかがえるが、人通りはまばらだ。
また、コトノハコ神戸は山陽新幹線の停車駅である新神戸駅と直結しており、施設周辺には新幹線を利用する観光客やビジネスマンもいるはずである。しかしそのような装いの人も、コトノハコ神戸ではほぼ見かけない。
北野エリアの観光客や新幹線を降りた人が立ち寄らず、施設内で消費をしていないのである。
数字で見ると、その「人通りの差」はさらに明確になる。「統計情報リサーチ」によると新神戸駅のJR西日本部分の1日平均乗降客数は約1万7千人。隣の三ノ宮駅の約22万人と比べると、約13倍の開きがある。三宮側に出ればJR・阪急・阪神・神戸市営地下鉄・神戸新交通(ポートライナー)の5社6駅が集まり、乗降客の合計は1日あたり71.4万人にのぼる。
新幹線専用駅の新神戸で降りた観光客が、まず三宮を目指す動線はこの規模差からも自然に説明がつく。
運営主体が何度も変わっている
3つ目の要因は、ダイエーの経営破綻と運営主体の頻繁な変更だ。
コトノハコ神戸はOPAとして1988年9月に開業し、ダイエーリアルエステートが運営していた。
ダイエーがバブル崩壊により経営が圧迫していたところに1995年、阪神・淡路大震災が発生。発祥の地、神戸・三宮でも甚大な被害を受け、被害総額は500億円にのぼった。
OPAの運営は十字屋へ引き継がれていたが、赤字に陥り、2001年3月には同じダイエーグループの福岡ドームに営業権が譲渡された。
2004年にはモルガン・スタンレーに売却され、生みの親のダイエーグループの手を離れることに。運営管理は一度モルガングループが担ったのち、2006年にジオ・アカマツ(現野村不動産コマース)へ委託された。
2009年にはタイの大手財閥へ売却され、2019年にJLLモールマネジメント(現JLLリテールマネジメント)によりコトノハコ神戸へリニューアルされたという変遷をたどっている。
モールは開発して終わりではなく、建ってからが始まりである。運営主体が定期的に変わると、中長期的な運営方針やテナント誘致戦略を立てにくい。何度も運営主体が変わっていることは施設にとって大きな痛手だ。

