メローニにNOを突きつけた若者たち
ではなぜ、メローニは世論のご機嫌をとるような発言を続けているのだろうか。
2022年10月に発足したメローニ政権は、憲法が定める最長任期5年、つまり2027年末まで政権を全うできるかどうかの瀬戸際にある。3月に行われた司法改革をめぐる国民投票で、メローニ政権が推進した案が否決され敗北を喫した。
その結果、「早期の解散総選挙を行うべき」という圧力が強まっており、任期満了前に首相の座を退く羽目になるかもしれない大ピンチにある。今まで選挙に興味がないと言われていた若者層の多くが投票に赴き、NOを突きつけたことが大きいと言われている。
経済格差や労働問題など不満の理由はさまざまだが、パレスチナ・ガザ問題に消極的で明確な親イスラエル寄りなメローニ政権に対して若者たちは大きな不信感を抱え、政権は急速に求心力を失っている。また表現の自由や市民活動の制限、デモや抗議への圧力をかけるなどの政府の動きに対して、ネオファシズム的要素の継続を心配する声も特に都市部から上がっている。
一方、50代以上の保守層からは一定の支持を得ることで支持率40%前後をキープしていたが、直近の調査「youtrend」によると支持36%、不支持57%という厳しい数字になっている。「トランプともイスラエルとも仲良くしてきたのに、結局エネルギーコストが爆上がりし、ローマ法王まで侮辱された」という現実が、保守層の「メローニ離れ」を引き起こした。
なぜ「歪んだ像」が日本で広まるのか
日本で語られる「メローニすごい論」は、いい部分だけを切り取って作り上げられた虚構であり、イタリア国内ではむしろ評価が分かれ、とりわけ若年層との乖離が目立つというのが現実だ。
歪んだメローニ像が広まった要因としては、まずトランプ大統領との関係の「誤読」が挙げられる。一次情報がイタリア語であるが故に正確な読み取りが難しく、正確な情報も少ないことから起こった可能性がある。さらに強い女性リーダーへの幻想や、海外政治の単純化もあるだろう。
イタリアに暮らしていて常に感じていることだが、日本では頻繁に「欧州では」「欧米では」という言葉が登場する。だが欧州にはEU加盟国だけで27カ国もあるのだ。北はフィンランド、スウェーデン、デンマークからバルト三国に東欧諸国、そして南はイタリア、スペイン、ギリシャに至るまで、気候も文化も政治もまったく違う国々を「欧州」と一言でまとめてしまうことに無理がある。そこに遠く離れたアメリカを加えて「欧米」だなんて、言わずもがな。
AIの普及によってフェイクニュースも激増する昨今、自分の目と頭で一次情報を探し、読み解き考え、偽情報に振り回されないようにしていきたい。


