力があるのは間違いないが…
そこで後半、ブラジルは日本の反撃に面食らった。前半の展開を考えれば、“そんなはずはない”という戸惑いが強かったのかもしれない。
動揺の中で流れを失い、ミスから失点し、混乱が広がった。さらに失点を浴び、スイッチを入れ直したが、再起動できない。
逆転された後、前線の選手は仕掛けるが、チーム全体の意思統一がなく、総攻撃の形にはならなかった。
大昔の日本だったら、ここからでも逆転されていただけに、“力がついた”のは間違いない。しかし、あくまで過去の日本と比べた話である。
2025年9月、10月シリーズ、森保ジャパンはメキシコ、アメリカ、パラグアイと1度も勝てなかった。
メキシコ戦はがっぷり四つともいえる引き分けだが、持ち味の「手数をかけた攻撃」は出せていない。アメリカ戦は内容的にも完敗で、目を覆うような戦術的不具合を起こしていた。
パラグアイには要所で後手に回って、終盤の上田の得点で帳尻を合わせたドローだ。
ブラジル戦の逆転勝利に水を差すわけではないが、勝って兜の緒を締めるべきだろう。
サッカーはかみ合わせや心理面で、流れが大きく変わる。典型的な現象の1つが起こったに過ぎない。
ブラジルを抜いたわけではない
「世界最強ブラジルに勝った!」
それは幻想である。
2022年6月、日本はブラジルに0―1で敗れている。最後はブラジルが流した格好だったが、得点を奪えていない。
個人的な感覚で言えば、この試合こそ現実味があった。
ブラジルがフルメンバーに近かったのはあるが、ボールを扱う、駆け引きをする、というところで日本を上回っていた。
1度は日本の選手に出し抜かれても、すぐに適応。たとえば後半に投入された三笘薫(ブライトン)に対し、エデル・ミリトンは最初、やや後手に回っていたが、すぐに間合いの設定を変え、そこからは完封した。
「僕の1本目の仕掛けで、ミリトンは立ち位置や体の向きとかを変えて、2本目からの対応力を感じました。そこはプレーを切り替えられるようにならないと……」
三笘は苦々しげに振り返っていたが、適応力で差があった。
もちろん、三笘は4年前から成長を示している。そこからブラジルとの距離は縮まったが、抜いたわけでもない。
日本サッカーの進化を論じるとき、常に過去の自分ではなく、世界の現状と比較する必要があるのだ。


