経産省の強い意気込み

「あすか」にもNEC、日立など半導体メーカー11社が参加し、5年間に840億円が投じられた。「みらい」で確立した微細化技術をもとにして、「あすか」で進化したSoCを開発しようと、両者は互いに連携しあうこととされた。

「みらい」のリーダーになった広島大の広瀬全孝教授は「『みらい』でいまはまだ突き崩せない技術の壁を破り、『あすか』で現実の半導体製品の開発をしていく。日本の半導体産業の復権をかけていく」と意気込みを語っていた。

経産省に2001年に新設されたIT産業室長に着任した福田秀敬は、「みらい」「あすか」で培った技術をもとに半導体業界の再編を仕掛ける考えだった。「勝負はデザイン。台湾に負けないコストでやっていきたい」と福田は張り切っていた。国内5社の大手半導体メーカーを「設計」、「製造」にそれぞれ集約したい考えだった。

つまり「日の丸ファブレス」と「日の丸ファウンドリー」をつくる構想である。福田は大手各社の担当部長を集めた懇親会をしばしば開き、まずは互いのコミュニケーションを円滑にしようとした。資金を出してくれそうな外資系証券会社に足を運び、構想を売り込んでもいた。

経済産業省総合庁舎(本館)
経済産業省総合庁舎(写真=文部乱/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

集まるのは2軍以下のメンバー

こうした日の丸再編の動きを坂本(幸雄、エルピーダメモリ社長)は冷ややかに見ていた。

「『あすか』も『みらい』も絶対に成功しない。十数社でやること自体がうまくいかない。しかも各社とも本体に1軍を残して、プロジェクトに出す人は2軍以下のメンバー。これじゃ、うまくいくわけありませんよ」

福田が進めていた日本メーカーの大同団結による日の丸ファウンドリー構想も、しらけた気持ちで受け止めていた。

「大手5社以上が参加して日本の半導体工場の基幹となるものを作ろうという考えを聞いたけれど、設備投資に4000億円ぐらい必要になるので、その2倍ぐらいの7000億~8000億円の売り上げがないと成り立たない。工場を造ることばかり言っているけれど、売り先はあるの? これでは巨額投資をしてもリスクが高い。しかも、各社が出資して合弁でやったら意思決定が遅いですよ」

すでに米国にファブレス企業が相次いで誕生し、台湾にファウンドリーのビジネスモデルができあがっていた。そこに後発で参入しても、「はたして安定的な取引のある大口客を捕まえられるのか」と坂本は疑問に感じていた。