「80万台増やす」政策の中身
対象は、今年の1月以降に新規登録した電気自動車、水素自動車、プラグインハイブリッドなどで、補助額は、電気自動車と水素自動車に3000ユーロ、プラグインハイブリッドなどは1500ユーロ。なお、低所得者、および子供の多い家庭には、さらに最高6000ユーロ(現行レートで110万円)までの増額が可能になる。
予算は30億ユーロ(約5500億円)で、29年までの3年という期限付き。ただし、無くなったところで打ち切りなので、早い者勝ち。これで80万台の電気自動車を増やす計画だという。
ちなみに、23年末に突然中止になった購入補助では、価格が4万ユーロ以下の電気自動車に対して9000ユーロ(政府6000ユーロ+メーカー3000ユーロ)、プラグインハイブリッドに6750ユーロ(政府4500ユーロ+メーカー2250ユーロ)という超大盤振る舞いだった。
ただし、トヨタや日産が強いハイブリッドは、“環境に悪い”という理由で補助対象から外されていた。今回もやはり外されたままだ。
それでも充電の心配のないハイブリッドは結構強い。その上、トヨタや日産は、どんなに批難されようがガソリン車も捨てなかった。この先見の明は、評価されるべきだろう。
それに比べてドイツの自動車産業は、今や問題が山積。慌ててガソリン車にも力を入れようとしているが、前述のように、お得意さん(中国)が冷たいので先行きは暗い。
必要なのは製造コストを下げること
本来ならば、この重要な基幹産業が国際競争力を回復するためには、補助金などという小手先のカンフル剤ではなく、製造価格を下げなければならない。
決め手は電気代だ。
それも、電気代への補助などというばら撒きではなく、発電コスト自体を下げるための抜本的な修正が必要なのに、政府は全くそれをしない。
また、もう一つ、生産コストを上げている原因が、膨大な規制や煩雑な報告義務といった官僚主義だ。モンスターのように肥大したこの仕組みが、能率的な労働を阻んでいることは周知の事実だというのに、政府は「改善する、する」と言いながら、実際にはそのための役所を新設したので、官僚の数は増えた。
そして、その結果、やっていることは毎度の如く、3年の間、嫌がる国民の目の前に30億ユーロという人参をぶら下げて、お尻を叩いて電気自動車を買わせようというもの。これで本当に80万台の電気自動車が増えたとしても、「じゃあ、そのあとは?」というのがまるで見えない。
ドイツの電気自動車の価格はいずれ下がるのか? 政府がずっと補助し続けるなどということはあり得ない……。国家の意思で採算が取れないものを作り続けてもうまくいかないことは、中学生でもわかる。
「だったら、しばらくこのままガソリン車に乗り続けようか」と思っても、いつ何時、ガソリン税が引き上げられるかも分からない。電気自動車に買い換えるなら、今でなければ潤沢な補助金は貰えない。しかし、将来の電気代はどうなるのか……? 展望が見えないまま、国民は次第に追い詰められていく。
