二択の罠から抜け出す「条件付きYes」

では、エンジニアはどう答えればよかったのでしょうか。

米村歩『「技術的には可能です」はなぜ伝わらないのか エンジニアのコミュニケーションの教科書』(KADOKAWA)
米村歩『「技術的には可能です」はなぜ伝わらないのか エンジニアのコミュニケーションの教科書』(KADOKAWA)

「できますか? できませんか?」と二択で迫られたとき、エンジニアは板挟みになります。即答すれば条件が欠落した約束になり、後で徹夜する羽目になります。

かといって「できません」と突っぱねれば、非協力的だとみなされ、営業や顧客との関係に角が立ちます。だからこそ「技術的には可能です」という玉虫色の逃げ道を選んでしまうのです。

このジレンマを打ち破るのが、「条件付きYes」という伝え方です。「条件付きYes」とは、YesともNoともつかない曖昧な返答を避け、先に端的に結論を述べたうえで、「Yes, if……(この条件が整えば可能)」や「No, unless……(この条件がなければ不可能)」と条件を明示する手法です。

先ほどのマンガの例で言えば、エンジニアは次のように答えるべきでした。「対応は可能ですが、テスト環境のデータが今日中に揃うことと、画面調整は後回しにすることが前提になります。その条件で合意いただけますか?」

【図表3】「条件付きYes」の実践イメージ
イラスト=ヤギワタル/図版=Isshiki

このように、Yes自体は言いつつも、納期や品質、優先順位などの前提を明確にするのです。これが「条件付きYes」です。条件を明らかにしないまま曖昧に「はい」と答えてしまうと、後々の火種になります。逆に、守れる範囲を明らかにして合意すれば、お互いの信頼は少しずつ積み上がっていきます。

「技術的には可能です」と言いたくなった瞬間。それは言い訳に逃げるためではなく、どうすれば可能にできるか」「どんな条件ならYesになるか」に思考を変換する絶好のチャンスです。その言葉をただの防衛線にするのではなく、条件を探す入り口として活用してほしいと思います。

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