一方、企業は土下座を求めるクレーマーにどう対応すべきだろうか。相手の気が済んで丸く収まるなら土下座ぐらい平気だという人もいるかもしれないが、浅見弁護士は「土下座する必要はない」とアドバイスする。
「土下座しても相手の怒りが収まるとはかぎりません。また一度、土下座すると、他のお客からも要求される可能性が高まります。向こうに正当な理由があっても、“代金を返して、立って謝罪”が鉄則です」
注意したいのが、自分の要求をはっきり伝えないクレーマー。常習クレーマーは、慰謝料などの名目で金品を要求すると恐喝でつかまることをよく知っている。そこで言質を取られないよう「誠意を見せろ」などといって金品を暗に求めてくる。
「『誠意は?』『社会的責任は?』『顧客満足は?』は、クレーマーが使うフレーズのベストスリー。相手の意図がわかっても、開き直って『これが私たちの誠意です』と通常の対応をすることが大切です。それでもしつこいようなら、バックヤードに合図を送って110番通報をしたほうがいい。警察は民事不介入ですが、通報するほど悪質なクレーマーにはきちんと対応してくれます」
(文=ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=アサミ経営法律事務所弁護士 浅見隆行 図版作成=ライヴ・アート)