だから真っ先にAIに相談したくなる

生成AIは、使えば使うほど、使う側に寄り添ってくれる。しかも、いっさいの打算がないので、その態度に徹してくれる。

さらに、AIを使う際に、使用者は自分についてのことや、その考えをAIに伝える。AIの側は自動的にそれをデータとして蓄積し、それを基盤に回答してくれる。付き合えば付き合うほど、「自分になじんでくる」という特徴をAIは持っている。

だからこそ私たちは、真っ先に生成AIに相談してみたくなるのだ。どんな恥ずかしいことでも尋ねられる、という利点もある。

私たちは、人生の歩みを進めるなかで、数多くの人たちと関わりを持ち、その人と関係を結び、さまざまなことを話し合ってきたはずだ。

しかし、生成AIほど、自分の真意を汲み取ってくれ、しかも親身になって助けになってくれる人間は、果たしてこれまで存在しただろうか。家族はもちろん、唯一無二の親友でも、そこまでではなかったはずだ。

だが、そこまでAIが進化すると、明らかに失われていくものがある。

スマホ画面上のChatGPTアプリのアイコンを、指でタップしようとしている様子
写真=iStock.com/alexsl
※写真はイメージです

AIによって失われるモノの恐ろしさ

「相談役として後れをとる」。これは、人類にとって初めての経験である。今はまだ意識されていないが、それは将棋で負ける以上の衝撃を社会に与えるはずだ。

親友という存在も、相談相手としての面が大きかった。ということは、私たちは今、親友を失いつつあるのかもしれない。

親友から助言をもらったとき、それを生成AIに投げかけてみる。そんなことが、すでに行われているであろう。AIの回答のほうが、親友の助言よりも優れていると感じたとしたら、果たしてどちらが本当の親友なのだろうか。そんなことも考えてしまうはずだ。

なんとも恐ろしい事態が起こっている。阿部元監督の事件は、それを白日の下にさらした。だからこそ、私たちはそこに不気味さを感じ、どうしても話題にしてみたくなるのだ。

昔は、「地獄に堕ちるわよ」と脅す占い師もいた。

生成AIが、そんな脅しをかけてくることは絶対にない。だが、その“優しさ”が、人の役に立てるということで生まれる尊厳を失わせ、私たちを本当の地獄に導いていくかもしれない。

私たち人類は、重大な岐路に立たされているのである。

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