③他者との関係を調整するスキル
三つめは、他者との関係を調整するスキルです。他者との相互作用は、いつも円滑に進むわけではなく、意見の相違からの対立や、様々なトラブルがつきものです。対立やトラブルは表面的な付き合いのときには、あまりみられなくても、関係が深くなるにつれて、より頻繁に起こる可能性が高まります。
対立やトラブルを避けることは大事なのですが、そのことを優先すると、当たり障りのないやりとりだけの表面的な付き合いにとどまり、深い関係を築くことが困難になる可能性があります。対立やトラブルをうまく乗り越える過程自体が、親密な関係構築に貢献するのです。
したがって、生じた対立やトラブルを不必要に深刻化させることなく、うまく収める行動をとるスキルが重要になってきます。菊池の尺度で挙げられている項目には、対立やトラブルの合理的解決に関わる行動のみならず、なだめる、謝るなど、対立やトラブルによりもたらされる「気持ち」に対する対処が含まれることにも、着目してください。このような行動は、短期的な関係の調整のみならず、好意度や信頼感を高めることを通して、長期的な人間関係についても、望ましい効果をもたらすものになります。
④なんらかの課題を解決するスキル
四つめは課題解決に関するスキルです。必ずしも他者の存在を前提としていないものもありますので、人間関係という観点からは、気が利く行動に直接つながるような項目ではないように見えるかもしれません。
しかし、仕事など、何らかの課題について協同することで、一人ではなしえないことを達成するというのは、私たちが他者と共に生きる意義の一つですし、実際、対人相互作用がみられる場面のかなりの割合は、このような状況が占めています。なお、ここでいう仕事は職場という場面だけでなく、たとえば家族やご近所の誰かと、何かの作業を一緒におこなうなども当てはまります。項目として挙げられているのは、個人でおこなう作業にも適用できる、一般的な課題解決スキルとみなせますが、これらが高いと、他者と共に課題に取り組む場面が円滑に進むことも期待できます。
仕事における気が利く行動をより効果的におこなうためには、仕事に関わる課題の構造や、要求されるタスクと関わる人のニーズの把握と対応が重要ですので、これらのスキルが基盤になるのです。このようなスキルは、先の見通しを持ち、段取りを立てるなどのマネージメント力に関わりますので、他者との良い関係をどのように作り維持していくのかという、人間関係マネージメントにも役立つものになります。
