②感情をコントロールするスキル
二つめは、自分の感情を調節するスキルです。たとえば、自分の中に湧き上がるネガティブな感情を、そのまま相手にぶつけてしまったりすると、人間関係を損なうことはいうまでもありません。気が利くことの根底に、自分の気持ちを制御する過程があることは、先にも述べたとおりです。
感情の調節は、表出をコントロールする段階と、自分の主観的な経験をコントロールする段階に分けることができます。前者は、たとえ強い怒りを感じていても、それを顔や言葉に出さないなどが当てはまりますので、より一般的には、行動表現を適切に調節するスキルの一つだとみなすことができます。
一方、後者は、本来は強い怒りを経験する場面において、怒り経験の強さを緩和することが当てはまります。たとえば、相手がわざと自分を傷つけようとしているなど、加害意図を認知すると、強い怒りが生じます。そのような場面で、加害意図はなかったのだろうと思いなおすなど、場面の解釈をし直すこと、また、他のことに気をそらせて、怒りの源泉を頭から追い払うことが、怒り感情を緩和するための方略になります。こちらは認知をコントロールするスキルの一つだといえるでしょう。
ネガティブな感情を出してもいい
なお、これら二つは、完全に分かれるわけではなく、認知コントロールがうまくできると、主観的経験が緩和され、それにより表出も穏やかになるというプロセスが想定できます。
ただ、ここで注意しておきたいのは、ネガティブな感情を出さないことが、常に良いわけではない点です。先に感情には機能があることを述べましたが、その一つが「コミュニケーション機能」とよばれるものです。
たとえば怒りは、相手の行動が自分にとっては加害的で不快であり、やめてほしいと思っていること、さらには、場合によっては報復するつもりだということを、相手に伝える感情です。これが伝わることで、相手は、自分の行動を反省し、加害的な行為をやめる可能性が出てきます。ネガティブな感情をむやみに抑え込むのではなく、効果的に伝えることもまた、社会的に重要なスキルになってくる点は、心にとめるべきことだと思います。
