※本稿は、唐沢かおり『「気が利く」とはどういうことか―対人関係の心理学』(筑摩書房)の一部を再編集したものです。
「気が利く人」になるためのスキル
社会的スキル(対人関係に関わるスキル)を持ち合わせていると、気が利く人になれそうな反面、さまざまな要素が複雑に組み合わさっているようにも見えます。あれもこれもと列挙されると混乱するでしょうし、これらを一気に獲得しようとすると、どうしたら良いのかわからず、大変に思えるかもしれません。
しかし、完璧に気が利くことを目指すイメージではなく、気が利くことを支える各スキルを少しずつ獲得していくというイメージで考えると、道筋が見えやすくなります。
一般的に、何かを習得する際、段階を踏んだり、習得するスキルに関わる要素を見定め、ひとつずつ練習したりします。気が利くことについても、少しずつ、できることを増やしていけば良いわけです。そのためには、スキルをいくつかの側面に分解し、どのような構造を持っているのか、その内容を知ることが効果的です。社会的スキルについても同様にすれば習得に近づいていくことができます。
社会的スキルとはどういうものか
社会的スキルとは、具体的にはどのような内容を持つのでしょうか。気が利くこととの関わりでは、共感、感情やニーズの察知、観察力、コミュニケーション力などと関係します。これらはいずれも、納得いただけると思いますが、もう少し体系的にその内容を把握する一つの方法として、社会的スキルの測定のために開発された心理尺度を参照し、そこでの質問項目を検討してみましょう。
図表1は、社会的スキルの程度を評価するために、菊池章夫が開発した尺度の内容です。KiSS-18(Kikuchi’s Scale of Social Skills)とよばれていますが、日本で社会的スキルを評価する際に用いられる代表的な尺度です。質問項目は、社会的スキルに関わる具体的な行動を表現したものになっており、これらができるかどうかという視点から、自分のスキルを見直すことができます。
十八の具体的な行動が挙げられていますが、これらの内容はいくつかのグループに分けることができます。この表では、どのようなスキルに焦点を当てた項目であるかに沿って、整理した形で示しました。菊池自身も調査データに基づき、尺度項目を分類していますが、ここではその結果ではなく、これまで本書で述べてきたことに沿った形でまとめてみました。
なお、研究などに用いる場合は、項目の前に振ってある番号順に提示し、それぞれの質問項目について、「いつもそうだ=5点」、「たいていそうだ=4点」、「どちらともいえない=3点」、「たいていそうでない=2点」、「いつもそうでない=1点」として、参加者に評定してもらうのが一般的です。では、各グループについて、詳しく見ていきましょう。


