モチベーションは“与えられるもの”ではない
リーダーに求められる最重要の役割は、「部下のやる気と自主性を育てること」です。仕事に集中できない状態を放置すれば、本人だけでなく、チーム全体に悪影響を及ぼします。「やる気が出ない」という部下に、リーダーはどう向き合えばよいのでしょうか。一時
的な励ましではなく、根本からモチベーションを育む視点が不可欠です。
「モチベーション(motivation)」の語源は、ラテン語の「モヴェーレ(movere)」です。「モチベーション」は「動機を与えること」や「物事を行う意欲・やる気」を意味しますが、モヴェーレにはほかにも、やる気を引き出したり、行動を促す意味が含まれます。
そもそもモチベーションは、「人から(外部から)与えられるもの」ではありません。犬が「お手」をするのは、ごほうびがほしいからです。ごほうびが与えられなくなれば、犬は命令に従わなくなります。企業でも、昇給やボーナスといったごほうびに頼るだけでは、社員のやる気はすぐにしぼんでしまいます。
本来のモチベーションは「自分の内側から湧き上がる力」です。仏教、とくに禅宗では、「主体的な人格」や「本来の自己」のことを「主人公」と表現します。外部からの影響や煩悩に惑わされず、生まれ持った佛性(生まれながらに持つ仏となるための性質)に目覚めることの大切さを説いています。
主体的に自分を見つめ、何事にも惑わされず、本来の自分として生きるのが「主人公」です。自分の人生を「やらされている」ものではなく、自分が主人公として選び取ることから、本当のモチベーションが湧き上がってきます。
報酬・昇進・賞罰では持続しない
モチベーションには、大きく2つの種類があります。「内的動機」と「外的動機」です。
●外的動機……報酬、昇進、賞罰など、外からの刺激によるもの。短期的には有効だが、持続性に欠ける。
●内的動機……やりがいや充実感、達成感、使命感など、自分の内面から湧き上がる動機。主体性を高め、長期的に力を発揮できる。
給料や昇進、罰則といった外的動機は、一時的には効果があっても長続きしません。長期的に人を動かすのは「何のために」「誰のために」という問いに根ざした内的動機です。叱ったり脅したり、罰則や懲罰を与えて人に従わせることも、外的動機です。
行動そのものへの興味や関心ではなく、外部からの刺激(罰則を避けること)が動機になっているため、その刺激がなくなれば行動も止まる傾向にあります。テストのためだけに勉強した知識がすぐに忘れられるように、外的動機に頼った行動は根づかないのです。
前述したように、上司が強権を発動し、痛みとセットで人を従わせるのは、「教育」ではありません。恐怖や罰則で行動を制御する「洗脳」ではなく、自分で考え、自分で決断する力を養うことが「教育」です。

