※本稿は、佐藤優『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる〈実践・成功編〉』(Hanada新書)の一部を再編集したものです。
立ち飲み屋は最高の「サードプレイス」
腎臓移植手術をする前まで、私はときどき一人で立ち飲み屋さんに寄っていた。というのも、立ち飲み屋さんは時代を映し出す鏡と思っているからだ。そこで、お客さんが話す内容を聞くだけで、いま日本で進行中の諸々の問題が浮き彫りになる。
私の経験では、そういう場所での話の内容は、だいたい2つに分けられる。一つは、会社に見る目がないため自分が冷や飯を食わされている、というもの。もう一つは起業の話だ。いずれにせよ、ほとんどがビジネス、経済、政治の話だ。定年後の人たちなら、そこに一人でいて新機軸の話題を聞いたとしても、「自分は取り残されている」などと感じないはずだ。
また孤独も感じないはず。もう切った張ったの出世争いもないのだから。そんな定年後の人たちは、余計な人間関係の連鎖を作らず、ただ社会に参加していればいい。なかなか良い身分だと言えよう。ただ立ち飲み屋さんに行くことは、定年後の日本人にとって、更なる効用がある。単にお酒や食事を楽しむ場にとどまらず、心身の健康や生活の質を維持する「サードプレイス(第3の居場所)」になるからだ。
孤立だけでなく認知症予防にもなる
「サードプレイス」としての主な効用は、以下の通りである。
①社会的孤立の防止と心地よい交流
・「敬老原則」から解放される場所:年齢や過去の肩書など関係なく、対等に話せるフラットな空間である。
・希薄な人間関係:深い付き合いが求められず、その場かぎりの会話が心地よい。適度な距離感でのコミュニケーションを楽しむことができる。
・居場所の確保:家庭や会社以外の居場所を持つことで、定年後の孤独や寂しさを埋めることができる。
・地域のハブとしての役割:地域の情報交換の場として機能しており、定年後の人たちが一人の人間として社会とつながり直すために、最もハードルの低い社交場となる。
②安価で健康的に生活のメリハリがつけられ認知症予防も実現
・「生活の区切り」をつける場所:1日の終わりや仕事・趣味のあとなどに行けば、立ち飲み屋や居酒屋は日常にメリハリをつける場所となる。
・経済的な負担が少ない場所:安価な海鮮や一品料理が提供され、年金生活者でも気軽に立ち寄れる。
・食の多様化:旬の食材など、一人暮らしや高齢者世帯においては準備が大変なものを、少量から楽しめる。
・脳の活性化:店主や他の客との会話、あるいは季節ごとのメニュー選びなどによって、脳が刺激されるので、認知症の予防に役立つ。

