ロンドン東部の再開発地区に、2012年秋に開校した公立高校が、全英の注目を集めている。高校の名は「ロンドン・アカデミー・オブ・エクセレンス(LAE)」。キャメロン政権の教育改革で誕生した公設民営型の「フリースクール」の1つで、大学進学に備えた教育を行う2年制の学校(日本の高2~高3に相当)だ。
この学校の特徴は、まずロンドンの中でも貧困層が多いニューハム区の真ん中にあること。そして、日本でも有名なイートン校をはじめとする名門パブリックスクール(私立)8校が、授業や課外活動を強力にバックアップしていること。最後に、オックスフォードやケンブリッジなど、「ラッセル・グループ」と呼ばれるイギリスの一流大学への進学を、はっきり目標として掲げていることだ。
入学審査は筆記試験と面接で行われるが、貧困地域や進学率の低い地域の子には優先ポイントが与えられる。13年秋の新入生募集では、200人の定員に対し630人もの志願者が集まった。
校長は、名門パブリックスクールのハイゲイト校で数学主任だったロバート・ウィルン氏。授業は難関大受験に的を絞った12科目のみで、8つのパブリックスクールがそれぞれ「担当教科」を持ち、LAEの教員と密接に協力しながらカリキュラムを提供する。つまり、無料の公立高校にいながら、イートン校の英語やハイゲイト校の数学の授業を受けられるというわけだ。
こうした教育の結果、12年に入学した1期生は、予想を上回る学力の伸びを記録。国の統一テストの結果によれば、1年生の終わりの段階で7割の生徒が、難関大合格を十分狙えるレベルに達しているという。
イギリスでは社会をリードする仕事の大半を、裕福な家庭に育ったパブリックスクール出身者が独占。マイケル・ゴーブ教育相はこうした状況を「道徳的に擁護できない」と批判し、私立学校は公教育の向上にも貢献すべきだと主張してきた。そうした改革の先頭に立つのが、LAEなのかもしれない。