平均倍率は20倍。働きながらの受験勉強

医学部進学を目指すには、できるだけ早くに志望を固め、準備を始めたほうがいい。一般論ではその通りだが、近年、医学部以外の大学を卒業して就職後、改めて医学部に編入するケースが増えているという。

「医学部受験に失敗した人の再挑戦や、医療系企業から医師への転職を目指すケース。また社会経験を経て、医師という職業に使命感を抱いた人など、動機は様々です。文系出身者もいますよ」と話すのは、医学部編入学講座を開講する河合塾KALS新宿校・校舎長の森靖義氏だ。

「医学部編入」には2種類ある。1つは他大学・他学部から医学部に編入する「一般編入」。もう1つが4年制以上の大学の卒業者(学士)を対象とした「学士編入」である。

なかでも学士編入は2000年頃から徐々に増加。背景には、「開かれた大学」を目指す流れの中で、「頭でっかちではない医師」を育成する目的がある。現在、国立大学28校、公立大学1校、私立大学6校で実施されており、定員は合わせて約260人となっている(内一般編入が可能なのは国公立3校、私立1校で、定員は約50人)。

「編入年次は2年次から、という大学が増えています。3年次から本格的な医学教育が始まるため、その前に必要な基礎教養をしっかり身につけさせる狙いがあります」

学士編入の試験科目は「学科試験+面接」が一般的。書類審査を設ける大学もある。学科試験の内容は、「英語+理科(生物、物理、化学)」が多いが、学士編入に特徴的なのが「生命科学」の出題である。

「生命科学は大学の教養課程で学ぶ内容です。基本的には理系学部出身者が有利ですが、文系学部出身でも生物が得意であれば積み上げはしやすいでしょう。試験科目の少ない大学を選んで、十分な対策を行えば合格の可能性はあります」