もっとも、試験問題の難しさと合格の難易度は別だと、森氏は続ける。「たとえば滋賀医科大学は、1次試験の総合問題がマークシート式のため人気が高い。志願倍率は約40倍となっています」
逆に試験問題が難しい大学は、倍率が低くなる。東京医科歯科大の志願倍率が7.6倍と低いのはその一例だ。いずれにしろ医学部編入の倍率はおおむね20倍以上。大学受験の医学部倍率は5倍程度(14年度前期入試)なので、はるかに難易度は高い。
「合格者の3分の1が東大、京大などの旧帝大出身者。やはり難関大学の卒業生が多いのが実情です。とはいえ、筆記試験勝負ですから勉強をやった者の勝ち。短大・専門学校卒でも改めて4年制の大学に入り、その後、4~5年かけて学士編入に合格した人もいます」
医学部の編入試験は、例年、5月から12月にかけて実施される。河合塾KALSの医学部編入講座では、準備期間を「1年~1年半」と設定したコースを開講している。
受験料や旅費を含めて総額100万円超
費用は通学コース(平日夜間や土日授業が中心)の場合、基礎(医学英文法や生命科学、物理・化学など)+完成(医学英語・生命科学・小論文)+実戦コース(同前)で60万円弱。物理・化学の強化コースを加えると70万円ほどとなる。
「加えて受験料が必要です。医学部編入の目的は『医師になること』なので、合格のチャンスを広げるために、5~10校を併願するのが一般的。1校あたり国立ならば3万円程度なので、10校受ければ30万円。さらに併願先が全国に広がるので、交通費や宿泊費も必要です」と話す森氏。当然、合格後は入学金と5年間(2年次編入の場合)の学費がかかる。
「退職して受験勉強に専念する人もいますが、あまりおすすめしていません。少なくとも合格の手応えをつかむまでは仕事を続けながら勉強したほうが安全です。特に家庭がある人は、費用や生活の面からも家族の理解が最も重要ですね」
子供が、ロボット博士か医者になるかで迷っていたら……。とにかく勉強さえしておけば、いずれの道も開くのだと伝えてはどうだろう。