さて最後に蛇足を1つ。

グーグルはなぜ無人運転などに関心を持つんだろうか? 多くの人は意外に感じたはずだ。

グーグルの発想は、実はかなり一貫している。グーグルは常に、利便性と引き替えに、人々にプライバシーを無償で提供させ、それを転売することで収益を上げてきた。検索では、人々の検索=関心を精度の高い検索結果と引き替えに提供させた。グーグルメールでは、メールを通じた交流やその内容を、きわめて利便性の高いウェブメールと引き替えに提供させた。携帯電話への進出はそのさらなる発展形だ。グーグルマップは、人の地理的な関心や移動についてのデータを提供させるサービスとなっている。

そして自動運転/無人運転も同じだ。人がいつ、どこへ移動するかというデータと引き替えに、利便性の高い交通輸送サービスを提供しようとしている。無人運転は、人が運転しなくていい、という話だけではない。それを代行するソフト=ネットの世界が、人々の行動に関するデータをさらに持つようになるということでもある。それはリアル世界とネットの情報世界との融合という、単なる交通利便性をはるかにこえた、大きな動きの一環でもある。社会にとっては、おそらくこちらのほうが重要であり影響も大きいはずだが、グーグルが――そして自動運転を推進したがる多くの関係者が――それをどこまで考えているのかは、見当もつかないところだ。

※1:国土交通省の「オートパイロットシステムに関する検討会」は、今年10月の中間まとめで、2020年代初頭頃までに「高速道路本線上(混雑時の最適走行を除く)における高度な運転支援システムによる連続走行」が「達成目標」としている。
※2:米国電気電子学会は昨年9月、2040年までに一般道を走行する自動車の75%が自動運転車になるとの予想を発表した。また21世紀半ばには自動運転車が標準的になることで、道路標識や信号、運転免許などがなくなる可能性があるとしている。

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