外交も調略もムダになる“怖さ”
もうノリノリで「織田軍は雑魚、このまま天下いけそうだな」というわけである。一度勝っただけでお気楽すぎるような気もする。しかしこれが謙信なのだ。感情が上がれば天下も見える。それが謙信という男だった。
信長が謙信を恐れた理由は、強さだけではなかった。
読めない、理屈も通じない、感情で動く……これが組み合わさると、どんな外交も調略も無効になる。信玄相手には罵倒できた。謙信相手には屏風を贈って平身低頭するしかなかった。そしてその謙信は、手取川で織田軍を撃破した翌年、突然死んだ。信長が本当に運が良かったのは、この面倒くさい相手が、上洛を果たす前に自分で止まってくれたことだ。


