メガネ代は支給されるがスマホ代はNG
36歳で生活保護生活に入った佐藤さんは、B型作業所を経て、現在はアルバイトをして生活している。
収入が安定してきたため、4月末には生活保護を卒業する予定だ。
「ギリギリではありますが生活できるようになり、生活保護があって良かったと思います。ただ、制度の中身が古いままな部分は改正してほしいと感じます。例えば、私は目が悪いのですが、メガネが壊れたら、申請すれば保護費の他に別途メガネ代が支給されます。でも、スマホやパソコンは認められないんです」
生活保護費は、食費、衣料費、光熱水費など、日常生活に必要な費用全般に加え、家電(冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、エアコン等)、家具(布団、カーテン、机)、メガネなどの生活必需品は、申請して認められれば「一時扶助」として別途支給される。
かつては携帯電話は「嗜好品」と見なされることが多かったが、現在は行政もスマホを「生活必需品」として認識している。そのため生活保護受給者がスマホを持つこと自体は問題なく、通信費も「通信費」として生活扶助の範囲で支出できる。
ただ、佐藤さんのようにスマホが壊れた際の修理や機種変更については、メガネのようにはいかないケースが多い。例外的に支援されるケースもなくはないようなので、もしもの場合は、福祉事務所に相談してみることをおすすめする。
「私は、生活保護を受けていることを隠していませんが、後ろ指刺されるような経験は一度もしていません。生活保護って、不正受給とかの悪いニュースばかり目にしますが、良いニュースってほとんど見ないんですよね。もちろん不正受給はなくしてほしいですけど、もっと多くの人が気軽に利用できるようになったらいいのにと思います」
佐藤さんは、思い込みやしがらみを、少しずつだが捨てられるようになった。
詰みかけた人生の「再スタート」
本連載ではこれまで佐藤さんを含め7人の生活保護経験者の事例を紹介してきたが、どの人も生活保護制度に救われ、一度は詰みかけた人生の「再スタート」が切れた。
「生活保護」は、利用したことがない人にとっては、自分とは無関係の遠い世界のもののように感じられる。筆者も、一度利用したら2度と戻れないのではないかという恐怖を感じていた。しかし実際に利用し、卒業した人は存在する。自分とは無関係の遠い世界のもののように感じるのは、その実態を捉え切れていないからに他ならない。
賃金は上がらず、物価が異常に高騰する昨今、生活が困窮する人の増加が予想される。
生活保護とはどんなものなのか。どんな人が利用し、どんな生活をして、どんな人が卒業し、再び社会に戻っていくのか。
生活保護の実態を明確にすることで、生活保護に対する批判や恐怖を減らし、救われる人や機会を増やしていきたい。


