成績トップなら年収2億円を稼ぐ人も

さらに、働き方が比較的自由で、自分の裁量で仕事を進められる点も大きい。李さんの会社では月に18日出勤すれば、それ以外はどこにいても自由で、顧客との面会や労働時間も自分で決められる。一定の業務さえ行っていれば、直行直帰も問題ない。

書影
中島恵『中国人は日本で何をしているのか』(日経BP)

中国の家族が病気になった黄さんは、この数年間、1カ月以上の帰省が何度もあったが、一部をリモートワークにすれば問題はなく、上司から文句をいわれることもなかった。

「中国人は束縛されるのが好きではないから、働き方に融通が利く点がこの業界の大きな魅力です。中国人に合っている仕事だと思います」と黄さんはいう。

さらに収入が歩合制であることが最大の魅力だ。一般の会社員と違い、保険営業では契約件数などによって収入にかなり大きな差が出る。先に紹介した日本人担当者によると、営業所で成績がトップクラスなら年収2000万円前後、全国上位の成績優秀者になると、年収1億~2億円という人もいるそうだ。

そうした点に魅力を感じて、彼女たちは生保営業の仕事に就いた。日本人担当者がいうように、中国人が日本の生保に入社し始めたのは10年代半ば頃。ちょうど「爆買い」ブームの時期と合致する。さらに私が取材した範囲だが、20年からのコロナ禍をきっかけに、生保の仕事を始めた人が多い。前述の張さん、李さんもそうだ。

きっかけは「コロナ禍」だった

張さんは10年代に留学のため来日。都内にある2~3社の中国系企業で働いたが、日本企業で働いた経験はなかった。コロナ禍で中国系企業の業績が悪化し、退社して家事や子育てをしていたところ、友人に誘われて入社した。

「せっかく日本に住んでいるのだから、一度は日本企業で働いてみたい、その中をのぞいてみたい、というのが入社の動機でした。一緒に入社した中国人は次々と辞めていきましたが、私にはこの仕事が性に合っていたのか、最初から営業成績がよかった。生保の仕事自体が面白いので続けています」と語る。

中国人は日本で何をしているのか』(日経BP)の取材で出会った中国人の多くは、コロナ禍で中国との往来が途絶えたことが、仕事人生に大きく影響したと証言する。コロナ禍で仕事や生活、人生について、深く考えるようになった人が多いのは日本人も同じだ。

コロナ禍でインバウンド関連のビジネス機会が激減、転職を余儀なくされた中国人も目立つ。そこで、ハードルが高いと思われていた日本の大手企業の仕事、日本国内でも中国人相手に働ける仕事に就いた人が多い。その仕事のひとつが生保業界だったのだろう。

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