子どもにも遊んでもらえるルール作り

宮本は後年のインタビューで、ファミコンのゲーム作りにおいて大切にしてきたことは何かと聞かれて、「ゲームを遊んでいない人が見ても、楽しめる。何をやっているのかよくわかる。とにかくわかりやすいルールづくりをすること」と答えています。

自宅でソファから飛び降りながら楽しんでいる遊び心のある子供たち
写真=iStock.com/skynesher
※写真はイメージです

彼が「ゲームを遊んでいない人」を想定していた理由は、当時のファミコンのプレイヤーの大多数が、アーケードゲームやコンピュータゲームの経験が乏しい(またはまったくない)子どもだったからです。しかも子どもは、大人と違って、ゲームの説明書をちゃんと読んでくれるとも限りません。そんなものに目もくれず、いきなり遊び始めることもしばしばです。それでは、そうした子どもにも遊んでもらえるような分かりやすいルールを作るには、どうしたらよいでしょうか。宮本はこう言います。

「たとえば左端から人が出てきたら右に走りたくなるでしょう。右に走っていったら穴があるから飛び越えよう、触ったらまずそうなものがあるから避けよう、そうして進んでいったら旗が見えて、ならばそれに掴まってみようと思うものじゃないですか。旗に掴まったらゴールというのは、非常にわかりやすいルールですよね。」

マリオは左端に位置していて右を向いている

ゲーム開始直後、マリオは画面の中央ではなく左端に位置していて、しかも右を向いています。そうするとプレイヤーは思わず右に向かって走りたくなります。また上から踏んでも倒せない敵(トゲゾー、パックンフラワー)は、いかにも「踏んだら痛そう」に描かれています。長いポールの先端に旗が付いていれば、プレイヤーは思わずジャンプをしてそれに掴まりたくなります。このように『スーパーマリオ』では、プレイヤーがやるべきこと(またはやるべきではないこと)が、誰でも画面を見ればすぐに分かるように直感的にデザインされています。

またブロックの状態が変化するとそれを叩いたときの音も変化するというように、環境側の状態をプレイヤーに知らせるさまざまな効果音や、残り時間が少なくなるとテンポが速くなって緊張感や焦燥感を高めるBGMなど、画面だけではなくサウンドも、直感的で分かりやすいルール作りに貢献しています。