ソ連での誕生
①は『テトリス』のオリジナル版です。アレクセイ・パジトノフが「エレクトロニカ60(Electronika60)」(1978年)というソビエト連邦内で製造されたコンピュータのうえで開発しました。「エレクトロニカ60」は、アメリカのDEC社のミニコンピュータ「PDP-11」(1970年)の模造品でした。当時のソ連の研究機関は、西側ではとっくに時代遅れとなったコンピュータを使っていたことになります。
「エレクトロニカ60」にはグラフィックスを表示する機能がなかったため、テトリミノは文字(角括弧とスペース)を組み合わせた、いわゆる「アスキーアート」で描かれています。画面はモノクロで、ビープ音の効果音が付いているだけで、音楽(BGM)はありませんでした。
オリジナル版の「誕生日」
このオリジナル版がいつ作られたかははっきりしません。現在、ザ・テトリス・カンパニーは『テトリス』の公式な「誕生日」を「1984年6月6日」としています。しかし、かつては『テトリス』は「1985年6月」に作られたというのが定説でした。パジトノフ自身が「1985年」と証言している資料も存在します。さらに奇妙なことに「1984年6月6日」説は、2009年6月に突如として出現したものであり、それ以前のどの資料にも記載されていません。
そのため今日では、この説は、ロサンゼルスで2009年6月に開催された「E3」(世界最大級のゲームイベント)の関連企画として『テトリス』の「生誕25周年」を祝うために、ザ・テトリス・カンパニーや広告会社が急ごしらえで「捏造」したものだろうと推測されています。残念なことにゲームの歴史は、このようにいとも簡単に「改竄」されてしまうのです。したがって本講義では「1984年6月6日」は採用せず、「1985年6月」という従来の定説に従います。
