「事前に信長の元へ送られた」

「豊臣兄弟!」では、概ね次のように描かれる。信長が藤吉郎(池松壮亮)たちに、長政との和睦交渉と市の助命嘆願をすることを許したので、ついに小谷城に攻め入った藤吉郎は主殿に赴く。だが、長政は生き残ることを潔しとせず、市に逃げるように指示して、みずからの命は絶ち、小谷落城となった――。

だが、当時の記録は一般に、女性についての記述が少なく、市と娘たちがどのようにして生き延びることになったのか、同時代の史料からはわからない。寛永年間(1624~44)に成立した『当代記』には、〈浅井長政の妻は信長の妹で、それゆえに、問題なく引き取られた(原文 浅井備前守妻女は信長妹也、然る間、異儀なく引き取られる)〉と書かれているが、いったいいつ、だれが、どこに引き取ったのか、さっぱりわからない。

貞享2年(1685)ごろに成立した織田信長の伝記『総見記』には、次のように書かれている。