データが示す「背水の陣」のリスク
気象キャスターなどのキャリアを積んだ今、私は就活生や転職希望者の相談に乗っている。その中で「追い込まれて負のループに陥る人」を数えきれないほど見てきた。だから転職希望者には、「心身を壊しそうな緊急事態でない限り、いまの会社を辞めずに活動すべきだ」と伝えている。学生には「第一志望を受ける前に、できればどこかひとつでも内定という保険をもらっておいたほうがいい」と助言している。
これは個人の経験則だけではない。人材サービス会社などによる客観的なデータからも読み取ることができる。
①転職における「空白期間」リスク
レバレジーズによる中途採用担当者を対象とした実態調査によれば、離職期間(キャリアの空白期間)は「仕事への耐性が弱そう」「仕事への意欲が低そう」といったネガティブなバイアスを抱きやすくなるという。在職中に活動していれば、そうした疑念は生じない。
②焦りが招く「不本意な妥協」リスク
GOLD CAREERの調査でも、転職経験者の約8割が「転職活動は働きながらするべき」と回答している。退職して貯金が減っていく焦りは冷静な判断力を奪い、「どこでもいいから早く決めたい」と、本来なら選ばないような不本意な条件や環境で妥協してしまう要因となる。
③新卒就活における「内定の二極化」
就活情報サイトマイナビの大学生活動実態調査を見ると、就活後半で「内定0社」の学生が約1割残る一方、「3社以上」の内定を得ている学生は4割を超える。内定保有者の平均獲得数は2025年卒の実績で2.7社だという。
つまり、1社受かる学生はまぐれではなく、連鎖的に複数社から内定を得ているのだ。もちろん、受ける企業の規模や競争率にもよるが、私が見てきた中でも、「最初の1社」が心の余裕を生み、面接のパフォーマンスを押し上げ、次の内定を呼び込むという学生は多い。
私たちは「小心者の凡人」である
「背水の陣」で奇跡を起こせるのは、ごく一部の才能、運、精神力を持つ人だけだ。
私を含め、多くの人間はプレッシャーに弱く、先行きが見えない不安に押しつぶされてしまう。そんな小心者の凡人は、保険があるからこそ思い切って勝負ができる。いま挑戦を迷っている人のなかにも、命綱さえあれば思い切り跳べる人がきっといるはずだ。


