10万円が300万円になったコイン

大きく値上がりした一例が、中国の貴州省で1917年に発行された自動車ダラーです。これは7銭2分銀貨で、ウラ面に当時のフォード車がデザインされており、高い人気を誇ります。2008年時点の30万円から2020年までに300万円ほどに値上がりしていますが、さらにさかのぼると2000年時点では同状態のものが10万円ほどで買えました。

【図表1】中華民国、7銭2分「自動車ダラー」
出典=田中徹郎『【決定版】アンティーク・コイン投資のすべて』(日本実業出版社)

ほかの銘柄を見渡しても、この間30倍ほどに値上がりした中国コインは珍しくありません。特に、希少性が高く、その意味で富裕層の所有欲を満たす銘柄は、幅広く同様の値動きをしています。

先ほどから私は「コイン収集はお金持ちの遊び」と言ってきましたが、これは今後のコイン相場を予想するうえで大切な考え方だと思います。

美術品や宝飾品などに対する富裕層の姿勢をみると明らかなように、富裕層は他人が持っていない、希少なコインやデザイン性が豊かで美術的な価値が高いものを欲しがる傾向にあります。

コインも例外ではありません。たとえば、数万円程度のコインがほとんど値を上げないのは、このような理由からだと考えておくべきでしょう。

このような視点から、経済成長性が高く、なおかつ貧富の格差が大きくなる国や地域のコインが、投資対象として有望だとわかります。逆に言えば、このような原則から外れた急騰はバブル的な要素を疑うべきでしょう。

有望国・インドの狙い目コイン

「今、世界で一番成長が期待されている国はどこですか」。このような質問をすると、多くの人はインドを挙げるのではないでしょうか。

古代インドの硬貨
写真=iStock.com/Vinayak Jagtap
※写真はイメージです

すでに人口は14億人を超え世界一ですし、人口構成をみても若年層が多く、今後しばらく高い成長が見込まれる国だと言われています。一人当たりのGDPをみても3000ドルに達しておらず、逆に言えばまだまだ富裕化の余地はあります。ITや製薬産業を中心に地場の資本も成長してきており、さらに貧富の格差は広がっていくでしょう。

このような経済状況から考えて、インドのコインは有望だと考えていいでしょう。

コインの歴史という観点でみてもインドは有望な市場だと思います。まずはその多様性と銘柄の豊富さです。日本や中国をみても明らかですが、アジアはコインの先進地帯であるオリエントやギリシャ・ローマとはまったく異なる歴史をたどってきました。

中国で、ヨーロッパ基準のきれいに成形された丸い金貨や銀貨が貨幣として使われはじめたのは、せいぜい1800年代の終盤以降です。それ以前は馬蹄銀や馬蹄金など、金や銀を簡単に成形したものを高額貨幣として使ってきました。

この点では日本も大差ありません。江戸時代以降、大判、小判といった独特な金貨や丁銀ちょうぎんと呼ばれる非成形の銀貨を主に使っており、西洋基準の丸い金貨や銀貨を作ったのは明治に入ってからです。日本・中国以外のアジアも大差はありません。

そのような観点からは、インドはアジアで唯一、古代から現代まで世界基準の金貨や銀貨を発行し続けた国だと言えるでしょう。