注目株・東南アジアのコイン

日本や中国と同様、この地域で西洋基準のコインが作られはじめたのは1800年代に入ってからですが、東南アジアを一つの地域としてくくることはできません。なぜなら東南アジアは1500年代以降、まずスペインやポルトガルが、続いてオランダやイギリスが植民地化し、それぞれの地域で異なったコイン史を持つからです。

その点で特に有望なのはタイ、アンナン(ベトナム)、カンボジア、インドネシアの4カ国だと私は思います。この4カ国のコインに関して私は今まで書いた本のなかでお勧めしてきましたが、その後、現在に至るまで予想通りの値動きをしています。

たとえばアンナンの大型銀貨や金貨です。さすがに急に値上がりした後、足元で高原状態にありますが、コインの値動きを振り返ると、「階段状の値上がり」はよくみられる現象です。

【図表2】アンナンの7銭銀貨「明命通宝」
出典=田中徹郎『【決定版】アンティーク・コイン投資のすべて』(日本実業出版社)

コインの値動きを観察すると、三角定規の一辺のように一定のペースで値を上げることはありません。しばらく値動きを止めた後、急な値上がりがあり、またしばらく高原状態が続く。そして一定期間経過した後また急騰して高原状態に入る──。これが典型的なコインの値動きパターンだということがわかります。

現在のアンナンは急騰の後の高原状態にありますが、いずれまた注目を集めるときがくるでしょう。

タイの狙い目は「ラーマ4世」コイン

タイも同様です。たとえば、ラーマ4世の2バーツはここ数年で急騰しましたが、足元は安定相場に入った観があります。この銘柄もまた「階段状の値上がり」を示す可能性が高く、その点で面白い銘柄だと思います。

なお、この銘柄はラーマ4世の生誕60周年を記念して発行されたコインで、4バーツ以下8銘柄があります。特に、4バーツは「鄭明通宝」と刻印されており、4センチもある超大型の銀貨です。残存数も少なく市場に出てくることは滅多にありません。

鑑定会社のケースに入って数字が付く個体はさらに希少で、MSクラス(未使用のコインを表すグレード)ですとオークションで1000万円ほどの値が付くようになってきました。

近年のタイは、ベトナムなどほかの東南アジア諸国と違い、経済の停滞期に入ってしまったようにみえますが、それでもタイの人たちの現物資産志向は強く、まだ値を上げてゆく可能性が高いでしょう。

タイやベトナムだけではなくアジア全般に言えることですが、西洋式のコインの発行はせいぜい1800年代に入ってからです。1940年代には日本による統治時代に入り、金貨や銀貨の発行は絶えてしまいます。

その後、この地域で再び金貨や銀貨が発行されはじめるのは、第二次世界大戦後の混乱期が終わる1970年代に入ってからです。このような点もまた、私がアジアのコインが有望だと考える理由の一つです。

そもそも銘柄が少なく、さらに経済規模の点から発行数も少ないうえ、1930~1970年あたりがスッポリと抜けているのはアジアコインの特徴です。今後、富裕層マネーがこの小さな市場に入ってゆくならば、この地域のコイン相場は上がらざるをえないでしょう。