中司祉岐さん

【俣野】僕はそういう意味では、不本意というか、自分が向いてない仕事をずっとやらされていたというか、やっていたんですよ。20代のいじけてた時代は。でも、なぜ変われたかというと、不本意だなと思うのを態度に絶対出さなかった。思ってはいたけど、それをやっつけ仕事にはしなかった。その結果、自分が苦手で向いてないなと思いながらも、「あ、こんな部分はすごいな」という、自分の中の強みや部分評価が見つかったんです。

僕は一時期生産管理の仕事をしていました。営業って、受注の締め切りを守らないで、「これ、なんとか追加してもらえませんか」などと言ってくるんですよ。そこで、「わかりました」と何とか対処したんですよね。自分がちょっと残ってやれば済む話だったり、メーカーに「これ、追加になったんでよかったね。追加取りましたよ」と言ったりすればいいんですよ。「いや、締め切り遅れて入れてきて」じゃなくて、「何とか追加取りましたんで、これやってください」と言えば、向こうもちょっと頑張ると自分のパフォーマンスも上がる結果になるので、全体の帳尻は合う。そういう全体を見る力というのは、そのとき養ったような気がします。

【中司】うまくいっている人、出世できる人は、目の前の仕事で、やはり自分が出せるだけの点数、自分が出せるだけの100点を出し切っています。

【俣野】いじけたら、自分のモチベーション、パフォーマンスが落ちるのはわかるので、そんな状況でも自分が得点を取るにはどうしたらいいんだ、と考えてみます。いじけモードでスパイラルに入るんじゃなくて、そんな中でも最高得点を取るにはどうしたらいいんだろう、と。

貸しと借りという世界は絶対出てくるので、ただ単に向こうのわがままを引き受けるだけじゃなくて、逆にいうと、「じゃあ、あと100個注文して取ってきてください。そうしたら乗せますから」、「次のリピートを前倒しして入れてくださいよ」という話も、当然できるんですよ。向こうは無理を承知でお願いしますと言ってきている以上は、こっちに無理を言う権利が発生するということなんです。それってまさに交渉の世界じゃないですか。