「米軍の圧倒的な勝利」発言の裏側
現在、トランプ大統領は、自分で自分の首を絞めているように見える。イラン戦争は膠着状況になり、交渉も進展しているようには見えない。こうした状況が続くと、戦争は長期化することが懸念される。
ここへ来て、トランプ大統領の支持率が下がっている。その背景には、物価の上昇が鮮明化していることがある。特に、米国では、米国のガソリン価格上昇の影響は大きい。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖が始まると、当然、エネルギー資源の供給が懸念される。原油や液化天然ガス、さらにはプラスチック製品の主な原料であるナフサの価格は上昇した。4月2日のトランプ氏の演説は、投資家にかなりの懸念を植え付けた。トランプ氏は「米軍が圧倒的な勝利を収めた」と強弁を貫いたが、戦争全面終結に関する情報は出さなかった。
投資家は、トランプ氏の強弁は、事態が厳しいことの裏返し、と理解した。その後、原油価格の上昇ペースは加速した。トランプ氏が虚勢を張らなければならないほど、イランの抗戦は激しかったようだ。
ホルムズ「逆封鎖」でも優位に立てず
想定外の事態に直面したトランプ氏は、米軍によるホルムズ海峡封鎖(逆封鎖)を行った。これは、イランが一部船舶から通航料を徴収し、戦費を獲得することを阻止しようとしたのだろう。それに加えて、イランや、イランの支援する武装勢力を兵糧攻めにする狙いもあったと考えられる。ホルムズ海峡は、中東地域への食料供給の要衝でもあるからだ。
それでも、米国とイランの交渉は難航した。一部には、ヘグセス国防長官が米軍の高官を相次いで更迭し、作戦計画の指揮系統が混乱したとの指摘もある。4月22日、トランプ政権は、イランとの停戦期限を、明確な期限を設けずに延長する考えを示した。イランとの交渉を優位に進めることは難しくなったことの裏返しとの見方は多い。
トランプ氏は、イランを攻撃した結果、革命防衛隊によるホルムズ海峡封鎖を招き、米国は海峡を封鎖し返した。世界の海運会社は、イランによる拿捕・攻撃と、イランへの通航料支払いなどを要因とする米軍からの拿捕、という二重のリスクに直面したことになる。
しかも、いずれも船舶関連の保険で100%カバーされるとは限らないようだ。世界全体で、原材料やリスクの抑制(ヘッジ)をはじめ企業のコストは増えている。

