【茂木】アメリカに行かれて、その思いが変わったんですか。
【孫】そう(笑)。僕は子ども時代にリンカーンの伝記を読んで以来、いまだにアメリカでは黒人は奴隷並みの扱いを受けているんだとばかり思っていましたからね、飛行機を降りたらその黒人たちが明るい服を着て堂々と談笑している姿にびっくり仰天しました。同時に「俺はなんてちっぽけなことで悩んでいたんだ!」と馬鹿らしくなりました。「そんなもん誤差じゃんか」と。韓国も日本も台湾も、アメリカ人から見れば「どっちがどっちだよ。地図見てもようわからん」くらいの誤差ですよ。オーストリアとブルガリの区別が我々にはつかないようなもの。
【茂木】日本国籍取得のときのエピソードもね、おもしろいですよね。
【孫】ははは(笑)。僕、子どものころから「一休さんって偉いなぁ」って尊敬していたんです。何かあったときに喧嘩しても仕方ないわけで、そこをとんちで切り抜ける一休さんは偉いと。
日本国籍をとりたいなら日本名に改名しろといわれても、せっかくこちらはコンプレックスを克服してきているわけで、ここでまた日本名を名乗ったら意味がないわけです。だいたい、林という日・韓・中どこでも使っているような紛らわしい名前もたくさんあるのに、なんで孫だけだめなんだと。すると「日本人が使っている名前ならいい」と。「だったら日本国籍で、孫という名前の人を探してきます」といって。
【茂木】それで奥さんを。うまい!(笑)。
【孫】はははは(笑)。僕と結婚して孫に改名した日本国籍の妻を「いました」といって。
【茂木】いやぁ、素晴らしい。ちなみに僕の茂木という名は、韓国語では蚊という意味なんだそうですね(笑)。
【孫】ああ、そうか!
たしかに(笑)。