国籍問題はとんちで解決
【孫】ソフトバンクアカデミアの校長先生です。僕は子ども時代に、なりたい職業が4つありましてね。1つ目が「小学校の先生」、2つ目が「事業家」、3番目が「貧乏画家」で4つ目が「政治家」だったんです。でも小学生のときに、韓国籍では先生と政治家にはなれないと親にいわれまして、この2つは泣く泣く諦めたんです。でも引退すれば、小学校の先生にはなれないけど、アカデミアの校長先生にはなれる。好きな絵も趣味で描くことができますし、4つの願望のうち3つ実現できれば、もうそれで満足して死んでいけるんじゃないかと思うんです(笑)。
【茂木】このフロアのエントランスに千住博さんの絵がかかっていましたが、たしか、モネもお好きなんですよね。
【孫】ええ。モネとゴッホ、そして千住博の3人が大好きなんです。
【茂木】しかしいまのお話はエスニシティの問題にも繋がってきますね。先日、中国問題の専門家とお話ししていたのですが、中国には約55の民族がいて、それぞれ身分証明書に記載されているらしいです。アメリカでも同様にエスニシティを書きますよね。AsianとかCaucasianとか。あれを見るとつい日本人としては違和感を抱いてしまうんですが、でもそれだけ中国やアメリカには多様な民族が溶け込んでいるということですよね。逆に日本人が違和感を抱くということは、「日本国は単一民族だ」という幻想を相変わらず抱いているというわけです。
孫さんは現在、日本国籍を取得されていますけど、それまでいかがでした。
【孫】16歳でアメリカに行くまでは、この問題は僕の中で唯一最大の悩みでしたね。普通に生活している分には誰も僕が韓国籍だとは気づかないんですよ。生まれたのも日本で、当時は家の表札も孫ではなく安本でしたから、クラスメートも全員僕が日本人だと思っている。だからそのままいけば純粋な日本人のふりはできたんです。でもそれができてしまうだけに、なおさらコンプレックスは鬱積していきました。