盟友ビル・ゲイツとともに韓国の金大中大統領(当時)に直談判した!写真右は成毛眞氏。(時事通信フォト=写真)

【茂木】なるほど。そうなると、もうソフトバンクの後継者育成ということに留まらず、日本全体のビジネス慣行を変えていくようなオープンシステムになっていく可能性もありますね。

ところで、孫さんはかつてビル・ゲイツさんと韓国を訪れて、当時の金大中大統領にブロードバンドの必要性を訴えたことがありましたよね。その結果、大統領のトップダウンで韓国のブロードバンド化が一気に推し進められた経緯がありますが、ああいうことは日本ではやはり難しいんでしょうか。

【孫】韓国と日本では政治システムが構造的に異なりますからね。韓国は大統領制で、少なくとも4年間の任期中はよほどのリコールでもない限り役職が続けられますから、リーダーシップも発揮しやすいんですよ。ところが日本は過去5年間を遡って見ても、総理の平均在任寿命は1年です。しかもねじれ国会となると、なかなかリーダーシップは発揮しづらいと思いますよ。

その意味では、日本の社会構造システムは、そろそろ見なおす時期にきているのかもしれません。かつて戦後の焼け野原から立ち上がり、国民の願望が「高度成長」という一本柱に集中していたときは、誰が政治家になろうと、国全体の方向性にさほどブレは出てこなかったと思うんです。でもこれからはある程度、国の指導者がリーダーシップを発揮できるようにしなければ、さまざまな危機を乗り越えにくいんじゃないでしょうか。

【茂木】むしろ孫さんご自身が政界に出られるお気持ちはないんですか?

【孫】いやいや、それはありません(笑)。僕は人生を事業にかけると決めていますから、今回の人生ではそれに集中しようと思っています。

【茂木】今回の人生では(笑)。

でも孫さんは、60代で引退すると宣言されていますよね。その後はどうされるんですか?