若者のインバウンドが爆増しているワケ

昨今では日本文化への関心が急速に高まっており、日本が半ば別世界として特別視されている。これを背景に、ジャパン・エフェクトは生まれた。

ファスト・カンパニーによると、ネットフリックスでのアニメ視聴数は過去5年で3倍に増えた。市場調査会社NIQのデータでは、アメリカにおける抹茶の小売売上高は3年で86%伸びている。鮮やかな緑のドリンクを持ち歩くこと自体が、いまやひとつのファッションだ。

なぜ「日本」というラベルだけで、見る目が変わるのか。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科の中嶋聖雄教授は、AFPの取材にこう答えている。アニメの緻密な背景描写や「形式を重視する文化的伝統」が、その根底にあるのだと。

深く考えずとも、一目で「日本らしい」と分かる。そうした目立ちやすい特徴を備えた日本発のコンテンツは、数ある投稿が溢れるフィードの上でも特に目を惹きやすいのだろう。

画面越しに日本に憧れる若者たちは、現実にも日本を訪れたいと考えるようになり、結果として経済にも貢献している。ファスト・カンパニーによると、20~40代にあたるZ世代とミレニアル世代の訪日者数は、コロナ前の2019年との比較で実に1300%増加した。

2025年のタイタン・トラベルの調査では、日本はSNSで世界で最も人気の高い旅行先だという。過去3年間で検索ボリュームは50%増加し、インスタグラムの投稿数は1億8400万件。「#Japan」のハッシュタグが付いたTikTokの投稿数は1560万件に上る。

長野県の小さな住宅街
写真=iStock.com/NicolasMcComber
※写真はイメージです

過度な神格化に戸惑う声も

もっとも、海外からの熱い視線を、当の日本人が手放しで歓迎しているとは限らない。

AFPの取材に対し、東京在住でマーケティング職の29歳女性は、「アニメの世界で描かれる『日本』は、実際の日本社会とはかなり異なります」と指摘する。

同じく取材に応じた28歳のグラフィックデザイナー女性は、外国人が日本を好きでいてくれること自体は嬉しいと話す。ただ、「日本人は次元が違う」といった過剰な賛辞には、「居心地の悪さを感じる」と打ち明けた。

好意は嬉しいが、まるで理想的な国のように持ち上げられるのは何か違う。受け手にしかわからない、そんな繊細な一線があるのも事実だ。

例えばソーシャルメディア上では、道路があまりにきれいなため、「日本の街は靴を履かなくても大丈夫」と誇張するユーザーも少なくない。インフルエンサーが主張するこうした説を、そのまま信じ込んで拡散する海外ユーザーも多い。

あるアメリカ人カップルはソーシャルメディアで、日本の街を実際に靴下で歩いた後、汚れた靴下をカメラの前に掲げ、「そこまでじゃない」とする検証結果を紹介。神格化されていた日本の現実を明かす動画として話題を呼んだ。

気付かされた「日本の価値」

AI翻訳で言語の壁が崩れ去ったいま、温かな交流が花開くと同時に、新たな問いも生まれている。

いまやユーザーは、相手の言語を意識することがない。自分の言葉で書き込めば、ほぼリアルタイムで翻訳され、そのまま相手に届く時代になりつつある。日本の日常の光景を綴った投稿が、思いがけず海外ユーザーの心に温かな灯りをともすような嬉しい誤算は、今後何度も起きてゆくのだろう。

ここ数年、世界的な日本文化・日本旅行ブームが続いており、日本に住む私たちとしては誇らしさを感じる面も多い。同時に、世界の他の文化に対しても興味を広げ、敬意を持って接することができれば、交流は双方向に広がり格段に面白くなる。1枚の焼肉のイラストをきっかけに始まった日米のXユーザーの温かなコメント合戦は、そんな国際感覚の大切さを語りかけている。

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