キャリアアップを目指した転職が一般的になり、転職エージェントを利用する人も増えている。経営コンサルタントの日沖健さんは「個人でも開業することができ、無数のエージェントが乱立状態にある。『成約すれば大儲け、辞退ならタダ働き』という歪んだ成功報酬制度のせいで、悪質なトラブルも起きている」という――。
従業員と面接する管理職の男性
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内定辞退で高額請求された30代男性

「転職エージェントの担当者に内定辞退の意向を伝えたところ、『今回の紹介に掛かった費用200万円を請求させていただく』と脅かされました。怖くなって、転職活動をいったん休止することにしました」

転職エージェントを利用して転職活動を進めていた三橋純一さん(仮名)のコメントです。転職エージェントと言えば、最近TVでCMを頻繁に流している元気印の業界――という印象がありますが、こうしたオワハラ(就活終われハラスメント)のような影の部分もあるようです。

三橋さんは、精密機器メーカーに勤める30代男性です。都内の私立大学を卒業して入社し、現在12年目です。これまで営業・経営企画・与信管理を担当し、着実に成果を出し、会社からは高く評価されています。

順調な会社生活を送っている三橋さんですが、管理職昇格を目前にして今後のキャリアに閉塞感を抱くようになりました。その精密機器メーカーは年功序列が色濃く、成果を出しても出さなくても昇進・昇給はあまり変わりません。転職し、挑戦的な仕事をしてみたいと思いました。

三橋さんが志望したのはコンサルティング業界です。経営企画部門でコンサルタントと一緒に仕事をする機会があり、コンサルタントの仕事が知的でやりがいがあるように思いました。さらには、年収1200万円超という高給も魅力的でした。

トントン拍子で進む選考に抱いた違和感

早速、三橋さんは転職エージェントに登録しました。たまたま知っていたX社です。X社だけで良いと思いましたが、転職経験のある友人から「チャンスを広げる意味でも、比較という点でも、もう1~2社登録したほうが良い」と言われ、別のY社にも登録しました。

転職エージェントX社の担当は小野田さん(仮名)でした。小野田さんは、「最近は新卒でコンサルティングファームで1~2年働いただけという若手の転職希望者が多く、メーカーでしっかり経験を積んだ三橋さんのような人材は貴重です」と三橋さんに興味を示しました。そして、登録して2週間後にコンサルティング会社A社を紹介してくれました。

A社での選考は、トントン拍子で進み、書類選考、現場のコンサルタントとの1次面接、シニアマネージャーとの2次面接とクリアし、あとはパートナーとの最終面接を残すだけです。A社では、この時点で実質的に内定で、最終面接では大きな失敗をしなければ大丈夫とのことです。

ここで、三橋さんには1つ疑念が湧いてきました。まったく業界未経験で30代半ばの自分がすんなり内定を獲得できたことについて、「最近は売り手優位の転職市場とは聞くが、普通こんなにうまく行くものだろうか。何か裏があるのでは?」という疑いです。