なぜ日本の試作品は精度が高いのか

中小製造業の本当の強みとは何か。問いを立て直すところから始めなければならない。

日本の試作・基盤加工を担う中小製造業の強みは、設備の新しさでも組織の規模でもない。「条件出しの暗黙知」(材質・形状・工具の状態など多変量の条件を、経験と五感によって最適化する職人固有の判断知)だ。

旋盤でワークを削るとき、最適な切削速度・送り量・切込み深さは、材質・形状・工具の状態・要求精度によって変わる。この多変量の判断を、経験を積んだ職人は数秒で行う。振動の音、工具の手応え、切削粉の飛び方――五感のすべてを統合した判断がそこにある。