「学歴」で投票するわけではないが…

政治家への信頼である。仮に、田久保氏が「東洋大学中退」を立候補の時から掲げていたとしたら、差し支えはなかった。文部科学省のデータに基づくと、日本の大学の中退率は2.00%と、きわめて低いものの、それでも、卒業しなかったからといって、政治家として不適格なわけでは、まったくない。それどころか、どの大学を出ているのかは、決定打とは言えない。

高市早苗首相を支持する人たちのなかで、彼女の学歴=神戸大学卒業を挙げる割合は、どれくらいだろうか。慶應義塾大学卒業の石破茂・前首相と高市氏を「学歴」という点で比べる人が、どれだけいるのだろうか。高市氏が信頼しているとされ、首相補佐官を務める日本維新の会の遠藤敬衆議院議員は、大学に進学していない。「高卒」だから、などという理由での彼への批判は寡聞にして知らない。

選挙で政治家を選ぶ理由は「学歴」(だけ)ではない。人柄、見た目、印象、雰囲気、といった、ことばにできないものも左右する。投票箱を前にして名前を書くときに初めて見た文字面からなんとなく決める、そんな場合もあろう。

なるほど、政策や、その実行力が問われるのは、言うまでもない。何をしたいのか、何をするのか、何ができるのか。そういった政治家としての能力が試されるのが選挙である。それでも、いや、だからこそ、誰に投票するのかは、実は、とても難しい。

選挙で「誰に投票するか」は難しい

すでに実績を残した人物であれば、それをもとに評価できる。逆に、今回の田久保氏のように、これまでの政治経験のなさを、しがらみのなさや清新さとして売り出すときには、かえって邪魔になる。それだけではない。「この政策を実現する」という訴えそのものが、「詐称」とまではいかなくても、大言壮語というか誇張である場合は少なくない。

かつて、小泉純一郎氏は「自民党をぶっ壊す」と叫び、「郵政民営化は必要ないのか、国民の皆さんに聞いてみたい」として、衆議院を解散し、選挙に打って出た。あれから20年以上が過ぎ、民主党をはじめ多くの政党がなくなった(壊れた)のに対して、自民党は政権から3年3カ月離れただけで与党の立場にいる。

小泉純一郎 内閣総理大臣(第87代)
小泉純一郎首相(第87代)(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

郵政三事業は民営化されたものの、郵便料金が高くなった以外に、私たちがダイレクトに実感する変化に乏しいのではないか。かといって、小泉氏が嘘つきだったとか、郵政民営化は無駄だったなどとあげつらいたいわけではない。あのとき、多くの有権者が小泉氏を信じ、一票を投じたのは、間違いではなかったし、反省すべき愚行でもない。