高齢者を襲うナショナリズムという病

特に、最近は経済のグローバル化が進むにつれて自国優先主義が台頭しています。自らの求心力を保つために、各国の指導者がこれまで以上にナショナリズムを煽るという傾向が強くなっているように思います。

このようなナショナリズムは、現代社会における持病の一種だと言えるかもしれません。それはもはやひとつのドグマ(教義)、宗教になっているというのが私の見立てです。

キリスト教や仏教など、本来の宗教は今やかつてのような絶対性を持っていませんが、代わりに現代の宗教と呼べるものが4つあると考えます。それは「拝金教」「出世教」「偏差値教」「ナショナリズム」の4つです。

現代人にとってお金と出世、それに結びつく偏差値、そしてナショナリズムは絶対的なもの。誰もがこれらに価値を見出し、追い求めているといっても過言ではありません。

なかでも拝金教と出世教が最も強い宗教でしょう。しかし、この2つは還暦をすぎるとその価値はしぼんでいきます。そして偏差値教もすでに学生からは遠く離れていますから関係ありません。最後に残るのがナショナリズムという宗教なのです。

戦前から繰り返す日本礼賛ムード

どんなに時代が進んでも、宗教的なものを求めるという人間の本質は変わりません。

新型コロナの蔓延、地震や台風などの天災、経済の停滞と二極化……。ますます先が見えない時代になり、閉塞感と不満がたまっています。

しかも還暦をすぎた世代には、歳をとっていくことの不安や孤独も加わります。何かにすがりたい、帰依したいという気持ちが強くなってくるのは当然のことです。

そこで、自分たちの民族や国家、歴史や文化に強く帰依して自尊心と矜持きょうじを保つ。それ自体が悪いわけではないのですが、得てして他国や他民族に対して排他的になり、差別主義的になるのが問題です。現代の、しかも還暦をすぎたシルバー層が最も入信しやすい宗教がナショナリズムだと言えます。

デモ中のハンドスピーカー
写真=iStock.com/Andyworks
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少し前のテレビ番組に日本礼賛ムードが目立っていたのも、そのひとつの表れでしょう。日本人や日本文化のここが凄いと、やたら外国人が感心したり、驚く顔を見て満足したりする。なんとも自己満足的で気持ち悪さを感じたのは私だけではないはずです。

実は戦前の一時期、同じような風潮があったのをご存じでしょうか。

日本のあるジャーナリストが、いかに日本民族が優れているかを羅列した本が当時のベストセラーになった。それが日本人は和式便所を使っているから足腰が強い。だから欧米人よりも優れているといった、なんともバカバカしい内容なのです。