「みんなで仲良く」は無理

【苫野】なるほど。どれだけ心の教育をやっても、行動が伴わないんだったらあまり意味はないですね。

【工藤】はい。むしろ行動よりも心の方を重視しているんです。でも席を譲る行為にそんな理屈どうでもいいじゃないですか。大事なのは、困った人がいたら助ける行為をするか、しないかでしょう。

「仲良くしましょう」もまったく同じ話ですよね。幼稚園や小学校にいけばどの教員も「みんな仲良くしましょう」と教えます。もしそれでみんな仲良くできれば、実に平和で心地よい学級になるでしょう。けれど、いろんな性格の子どもがたまたま集められた空間で「はい。みんな仲良くしましょうね」って無理なんです。中には、こだわりがあって、そもそもコミュニケーションが苦手な特性をもった子どもだっている。大人だって難しいことですから。

もちろん一生懸命、友好的に振る舞おうとする子どももいますよ。でもそんな子どもでも絶対に苦手な子が一人や二人いますよね。問題はそのときなんです。小さなときから大人たちに「仲良くしなさい」と言われている。でもいまの自分にはどうしても仲良くなれない子がいる。すると子どもってそのギャップに苦しむことになるんですね。ギャップの埋め方がわからない。

嫌いな人がいてもいい

【工藤】僕の息子がかつて、幼稚園に行きたくないと言いだしたことがありました。そのとき息子が人間関係で悩んでいると直感的にわかったんですね。そこで僕はこんな声をかけたんです。

工藤勇一・苫野一徳『子どもたちに民主主義を教えよう 対立から合意を導く力を育む』(あさま社)
工藤勇一・苫野一徳『子どもたちに民主主義を教えよう 対立から合意を導く力を育む』(あさま社)

「実はお父さん、職場で嫌いな人がいるんだよね」

あのときの息子の驚きと安堵の表情がいまでも忘れられません。息子は友だちと仲良くなれない自分を責めていたんです。そのあと僕はこう続けました。

「でもお父さんはその人に嫌いな態度は見せないし、毎日あいさつもするよ。もちろん攻撃などしない。先生が言っている『仲良くする』って実はそういうことなんじゃない。別にみんなを好きになる必要なんてないんだよ」

【苫野】すばらしいです。

【工藤】大人は子どもたちに対して、どんな場面ではどんな行動が望ましいのかを教えればいいんです。そこに「心」の話を持ちだすから話がややこしくなるんです。

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