理性的に考えるという大人対応
【工藤】それはウクライナ戦争をみても明らかですよね。「戦争反対! プーチンはひどい! ウクライナの人たちがかわいそう!」って僕も日々感じていますけど、それをただ吐露するだけでは問題解決に1ミリもつながりません。なぜロシアが攻めたのか。どんな条件なら譲歩を引き出せそうなのか。プーチンが一番こだわっていることは何か。どのタイミングで交渉すれば被害を最小限に食い止められるのか。そういうところまで踏み込んで考えないと対立関係は一向に解消しないはずです。
そしてそれを必死に考えているのがEUの首脳や外交官たちだと思うんです。どれだけ腹ワタが煮えくりかえっていてもあくまでも理性的に考える。これが成熟した大人対応だと僕は思うんですね。
心の教育よりも「行動の教育」
【苫野】何でもかんでも心を教育すればうまくいくという考えは、教育における「心理主義」と呼ばれ、教育学でも長らく批判されてきました。それに対して工藤さんは、「心の教育よりも行動の教育だ」とおっしゃっていますよね。
【工藤】はい。行動ならすぐに変えられるじゃないですか。たとえば日本の学校は「思いやり」の教育ばかりしますけど、電車やバスで席を譲る人は昔より少なくなっていると感じています。僕の知り合いが最近アメリカに引っ越したんですけど、小さなお子さんを連れてマンハッタンでバスに乗ったら、3、4人が一斉に席を譲ろうとしてくれて、「次で降りるから大丈夫です。ありがとう」と言ってバスの後方に移動したら、そこでも3、4人が席を譲ろうとしてくれたそうなんです。
【苫野】素敵ですね。
【工藤】それが日常なんですね。ではなぜ心の教育を重視している日本では席を譲る人が少ないのでしょうか。そもそも席を譲るかどうかさえ考えているとは思えない人もいます。考えてはみても「断られたら浮いてしまう」とか「目立ってしまう」、「偽善者だと思われたくない」などの不安が腰を重くさせているのかもしれません。

