ゴーンが命令した会議方法の開発

「会議」は、退屈で非生産的。たいていはそうでしょう。長々と時間をかけたわりに、上層部の意向に沿った予定調和的な結論になったりするのは当たり前。その後に議事録が回覧されると、各部署から修正の指示が噴出して、「会議での決定事項」と「議事録」という2つの別の結論ができあがり、その後の実行力が弱くなることまであります。

かつて官僚体質と批判され業績不振だった頃の日産もそうだったかもしれません。

同社の体質はカルロス・ゴーン氏が社長に就任したのを契機に、変貌を遂げます。ゴーン氏がリストラや合理化など大胆な改革をしたことは有名ですが、「会議の方法」の開発を指示していたことまではあまり知られていません。

現在ではすっかり社内に浸透した「V-up」と呼ばれる日産式の会議には、独自の方法があります。そのひとつが「議事録をつくらない」です。

では、会議をどう進めるのか。まず、模造紙数枚と大量の付箋紙を用意します。事前に会議のテーマや目的を聞いていた参加者は、自分のアイデアを付箋紙に簡潔に書き、模造紙にペタペタ貼っていく。最後に模造紙をデジカメで記録します。数十枚の直筆の意見をまとめて撮影した写真データは会議終了後にすぐさま関係者に配信されます。それが議事録の代わりになるのです。

写真を眺めれば、会議に参加していなくても、会議のプロセスやどんな意見のぶつかり合いがあったかの要旨をつかめます。後で修正をしようにも難しく、結論が複数ということにはなりません。

この会議の最大のメリットは、参加者が「視覚」を強く意識することにあります。普通の会議で意見を述べるとき、その内容はとかく冗長になりがちです。議事録をとる決まりがある場合、この無駄な部分も文字化されます。皮肉なことに、それを読んでも真意を測りかねることもしばしば起こる。これでは時間と労力のロスです。