長期追跡で判明した認知症リスク3割低下
認知症についても日本発の長期データが特に重みを持ちます。九州大学が福岡県久山町の住民を24年間追跡した「久山町研究」は、世界的にも精度の高さで知られます。60歳以上の1071人を追跡した結果、24年間で464人が認知症を発症。野菜摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループに比べて認知症リスクが27%低く、アルツハイマー病リスクは31%低い結果でした(Kimura et al., 2022)。
別の日本の大規模研究(50〜79歳の4万2643人を追跡)でも、野菜・果物の摂取量が最も多いグループでは、最も少ないグループと比べて認知症発症リスクが男性で13%、女性で15%低く、緑色野菜が多い女性グループでは21%低いという数字も出ています(Kishida et al., 2024)。
脳卒中死亡リスクも19%の差
認知症より身近に感じる人も多いのが、脳卒中や心臓病との関係です。厚労省研究班が実施した大規模長期追跡研究のデータがあります。野菜のみの摂取量で比較したところ、1日300グラム以上のグループでは、最も少ないグループ(1日170グラム)に比べて、循環器疾患による死亡リスクが19%低下していました (Okuda et al., 2015)。
さらに別のヨーロッパからの研究でも、野菜・果物の摂取量を1日200グラム増やすごとに脳梗塞のリスクが13%低下し、食物繊維は1日10グラム増やすごとに23%低下するという数字も確認されています(https://academic.oup.com/eurheartj/article/41/28/2632/5748325)。
そして寿命そのものへの影響も報告されています。米国の大規模データを含む2021年の報告では、野菜と果物は合わせて1日5皿ほど食べる人が、もっとも死亡リスクが低いことが示されました。目安としては、野菜を3〜4皿、果物を1〜2皿です。
ほとんど食べない人(1日2皿程度)と比べると、5皿前後食べる人では、全体として死亡リスクが約13%低く、心臓や血管の病気で亡くなるリスクは約12%低く、がんで亡くなるリスクは約10%低く、呼吸器の病気で亡くなるリスクは約35%低いという結果でした。(https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.048996)。
ここでも果汁ジュースやじゃがいもでは同じ関連は見られず、形のある野菜や果物を食べることが鍵を握っています。
以上、「子どもの脳」「働き盛りの気分と記憶」「老年期の認知症リスクと寿命」といった異なる研究分野が、食卓との関連性を示しています。冒頭で触れた1日100グラム弱の不足分は、野菜一皿と少し。その差がこれほどの意味をもつとしたら、野菜や果物を用意するのが「面倒くさい」という気持ちを少しだけ見直してみる価値があるのではないでしょうか。
子どもには野菜や果物を無理に食べさせるより、「一口だけでも大成功」という気持ちで進めることが大切です。にんじんをカレーに混ぜる、かぼちゃをスープにする、いちごやバナナをヨーグルトに入れるなど、好きな味に少しずつなじませると食べやすくなります。親と一緒に、買い物で選ぶ、洗う、盛りつけるなど食事づくりに参加すると親しみも生まれます。
大人では、完璧を目指さないことが続けるコツです。サラダが苦手なら、具だくさんみそ汁、野菜スープ、冷凍野菜、カットフルーツでも十分です。朝にバナナ1本、昼にトマトを足すだけでも前進です。「苦手だから無理」と決めつけず、食べやすい形を探してみることが、習慣化への近道です。今日から少しずつ、野菜や果物を増やした食事内容へと見直してはいかがでしょうか。


