「文化の差」の根本原因

【養老】外国人が、日本人は漫画ばかり読んでいると批判したり、大の男が電車の中で漫画ばかり読んでいると批判するわけですが、問題はもっと根深いんですよ。

だから逆に日本の漫画は水準が高くて、世界で受け入れられているわけでしょう?

【楳図】ええ、海外でよく売れています。アメリカにもむろん漫画はありますが、すごく単純です。

【養老】彼らは脳のある部分を使っていないわけですから。

【楳図】ああ、いいことを聞いた。今度、外国人が漫画について何か言ったら、ドンと言ってやろう。

【養老】文化の差というものは、そういうふうにして脳に戻していくべきだと思います。

あれがいいとかこれが悪いとか言うのは、言っている人にはそれなりの根拠があるんですが、相手には必ずしも通じません。お互い共通のモノサシがないからです。お互いの思考の違いを、脳の使い方の違いという点に還元すれば、もっと上手に説明できるはずです。

漫画にかかわる脳の部分というのは、他のことにも使えるわけです。だから「われわれはそこで漫画を読んでいるんだけど、キミらは漫画を読む代わりに何をしているんだ?」ってことでしょう。

【楳図】ホント、外国人は何に使っているんでしょうね。

ヨークシャーコスプレコンベンションで漫画を販売する屋台
写真=iStock.com/Phillip Horiba-Maguire
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頭の良し悪しではなく、脳の使い方

【養老】西洋人は、日本人が漫画を読むことに使っている脳を別のことに使っているはずなんですがね。そこでぼくは彼らによく言うんですが、「ぼくは漢字を覚えるのに使っちゃったから、その代わり人の名前を覚えるのは苦手なんです」と。

彼らは人の名前を覚えるのがうまい。パーティなんかで初対面の人の名前をすぐに覚えてしまう。

【楳図】そうですねえ。

【養老】あれは習慣だと言うんですがね。人の顔形というものに対して、ある特定の非常に恣意的な「音」を振るのが名前でしょう。あれは彼らからすれば、日本人が漢字を読むとき使っている脳を使っているんじゃないか、だから彼らはよく名前を覚えると、これは想像なんですが。

脳はコンピュータと同じですから、ひとつのところをあることに使うと別のことには使えない、容量の問題で。

そういうふうな脳の使い方があるわけだから、それをいいとか悪いとか言ってもしようがない。脳という限られた資源をどう使うかということです。頭がいいとか悪いとかいう言い方よりも、このほうがよほどモノサシになりうると。