日本人と米国人の脳の「決定的な違い」
【養老】たとえばコンピュータのソフトを設計するとして、英文をテレビカメラでずっと追わせて、こちら側で音を出す「本を読む機械」をつくったとします。そのとき英語の場合、WORDという単語であればワードという音にすればいいわけでしょう。
【楳図】そうですね。でも日本語では……。
【養老】そうはいかない。下に続く字を読んでからでないと音が決められない。そういうコンピュータのプログラムというのは、英語を読み取るコンピュータとは違うものになります。ということは、脳の同じ場所では処理できないということです。
【楳図】日本人の脳とアメリカ人の脳が、少なくとも言葉を読むために使う部分が異なっているということですね。これは驚いた。
そういえば、日本人と外国人の脳が違うというのは、虫の鳴く音を右の脳で聞くのは日本人とポリネシア人だけで、他の外国人は左の脳で聞いているというのを読んだことがありますけれど。
【養老】ええ。それとは違う話ですが、字の読みに関しては、日本の漢字の読み方だけがちょっと特殊になっているんです。そして、これがまた漫画と非常に深い関係がある。
猫より「ニャー」のほうがわかりやすいが…
【楳図】えっ、脳と漢字と漫画の間に?
【養老】三題噺ではありませんが、漢字というのはもともと象形文字でしょう。だから、「魚」という字はこういうふうに「魚」のイラストを描いたほうが簡単じゃないか(紙に魚の絵を描く)。
【楳図】そうですね、これなら外国人が見たってわかりますね。
【養老】そしてここに「パシャン」と書きます(魚の絵の右側に書く)。魚が跳ねた音です。英語で魚はフィッシュ、フランス語ではポワソンですが、その伝でいけば、日本語では、たとえばパシャンでもいいわけです。
しかし、魚という漢字はもともとイラストに近かったのが、時間がものすごく経過していまの魚という字になった。山だってそうだし、どんな漢字もそういう経過をたどってできあがった。
【楳図】なぜでしょうね?
【養老】魚は「サカナ」と読んでいます。なぜか「パシャン」とは言わない。でも猫だったら「ニャー」のほうがはるかにわかりがいい。
【楳図】猫らしいし、てっとり早い。

